「軍神はなぜ上官に反抗したか」が副題。9回出撃して9回生還した特攻隊員の佐々木友次さん。「臆病者」「なぜ死なないのだ」「なんで貴様ら、帰ってきたんだ。貴様らは人間のクズだ」と罵られ、「処刑飛行」までされた佐々木さんは答える。「私は必中攻撃でも死ななくてもいいと思います。その代わり、死ぬまで何度でも行って爆弾を命中させます」・・・・・・。
神風特攻隊については、幾多もの本が出版され、「悠久の大義に殉ずる」などの一言ではとても表わせない言語絶する世界の苦悶・沈黙が知られるようになっている。本書がド迫力で迫ってくるのは、「命令された側」の生の証言であることとともに、「特攻隊とは何であったのか」「なぜ愚かな特攻を続けるに至ったか」を、支配・被支配、戦争という異常時における組織と人間、国民・マスコミの熱狂、過剰な精神主義とリアリズム、「異常」への責任回避・転嫁、日本における「世間」と「社会」、思考の放棄と「集団我」、「当事者」の沈黙と「傍観者」の饒舌、日本文化と戦争など・・・・・・。まさに構造的に深く広く剔抉しているからである。それゆえに佐々木さんの「寿命ですよ」という言葉、岩本益臣隊長や美濃部正少佐等の勇気と存在が心に響く。現在の社会・組織と人間の問題を考えさせられる。