「10才の章子へ こんにちは、章子。わたしは20年後のあなた、30才の章子です。・・・・・・」。大好きなパパ(佐伯良太)を亡くしたばかりの章子に、突然不思議な一通の手紙が届く。"人"になったり"人形"になったり、体も精神的にも弱いママ(文乃)と2人で暮らしていくことになる章子。ママはいつから、どうしてこのようになったのだろう。そのママと樋口の名も故郷を捨てて、パパはなぜ結婚したのだろう。学校では、優秀だが、イジメにもあっている章子。新しく父親的存在になる男からの暴力・・・・・・。章子が交差する数少ない友人・知人のなかで次々起きるいじめ、虐待、自殺、放火・・・・・・。
とにかく最後までつらい。とくに出てくる女性がいずれも皆、酷い目にあい、想像を絶するどん底の闇に落される。"人形"という病に化して遮断しなければ生きられない究極の絶望。そのなかでパパ、ママ、章子の揺るぎない愛情。その中心軸が、時間のなかに細くも芯の通った生命線として貫かれる。ママの心をこそのぞきたくなるが、それこそ読者が感じ取るものなのか。