最近、目黒区内で発生した児童虐待事件をはじめとして、児童の「虐待事件」「餓死事件」「置き去り死事件」「遺体放置事件」が続いている。児童虐待は10万件を越え、増え続けている。本書は「児童虐待を考える」ではなく、「児童虐待から何が見えてくるか」「社会は家族に何を強いてきたか」を現場の実態から問いかけている。
現場を歩いているだけに、表面的に言われている話とは随分違う。「作られた"残酷な父親"像」「親としての過剰な『生真面目さ』」「育てる力が乏しい親、それを支えない社会」「助けを求めることを知らない親たち」「社会に不信感を抱きつつ、その規範に過剰に従う」「完璧な母であれ」「社会につながれない"ニューカマー"たち」「子育てには家族という器がいる。しかし家族の凝集力が失われている現代」「母子家庭の貧困の根深さ。とくにニューカマー(例えばフィリピン人女性たち)」「育児は母親だけの義務か? 母性から降りる、共同体で支援する」・・・・・・。
そして、現場を歩くと、10年間で高度成長期につくられた近代家族の変容が見えてくる。「子どもを連れての住居移動」「母子家庭の増加」「性行動の活発化と離婚の増加」「安定した就労の困難」「性産業への一般女性が参入する敷居の低下」「ネット、SNS等メディアの進化」「虐待が脳を損傷させるなどの研究の進歩」「人の孤立化の進行」などだ。
新しい子育て社会をどうつくるか。厚労省の出した新しい社会的養育ビジョンにどう現実的魂を入れるか。児相など各部署での職員の力量アップ。親のキャパシティをどうバックアップするか。地に足をつけた問題提起がされている。