「ラプラスの魔女」の前日譚という位置付け。5つの短編よりなるサイドストーリー。最後の「魔力の胎動」は「ラプラスの魔女」につながっていくもので、青江修介の硫化水素ガス事故(事件)との出会いが描かれる。
「あの風に向かって翔べ」――不調に苦しむベテランのスキージャンパーの復活に、羽原円華が驚くべき能力を発揮する。「この手で魔球を」――工藤ナユタの鍼治療を受けていたプロ野球投手でナックルを扱う石黒。その球を受ける後継者を立て直すために、円華が動く。「その流れの行方は」――ナユタの恩師・石部が息子の水難事故で自分を追い込みふさぎ込む。解決に向かって円華が現場で流体力学実験を敢行、真相を解明する。「どの道で迷っていようとも」――盲目の作曲家・朝比奈は、助手が転落した衝撃に打ちのめされていた。ナユタの過去が明らかにされ、円華の現場での科学的分析で事態が解明する。
いずれも、ラプラスの魔女の不思議な異能の持ち主・羽原円華が活躍する。鮮やかとしかいいようがない。リズムと心情が心地よい。