昭和の怪物 七つの謎.jpg昭和史の検証を徹底的に剔抉してきた保阪さん。「40年余に延べ4千人近くの人びとに会ってその体験や考え方を聞いてきた。日中戦争、太平洋戦争を含む昭和の戦争を解明したいと思ってのことだった。多くの証言を聞き、多くの光景についての説明も受けた」・・・・・・。これまで多くのノンフィクションや評伝、評論を著してきたその上に、歴史の急所、生死の瞬間、決断を抉り出す。歴史といっても人。その人物がどういう思想・哲学をもち、どういう性格で誰を仲間としていたか。人物像を探るなかで、重要決断に至る思考の回路と瞬間を解く。どっしりとして、鮮やかで開目する思いだ。

取り上げている人物は6人。「東條英機は何に脅えていたのか」「石原莞爾は東條暗殺計画を知っていたのか」「石原莞爾の『世界最終戦争論』とは何だったのか」「犬養毅は襲撃の影を見抜いていたのか」「渡辺和子(2・26事件で凶弾に倒れた渡辺錠太郎陸軍教育総監の娘であり目撃者)は死ぬまで誰を赦さなかったのか」「瀬島龍三は史実をどう改竄したのか」「吉田茂はなぜ護憲にこだわったのか」――。いずれも短いが、さすが急所に一気に迫っている。

東條の精神論。それも「昭和天皇の真意を誤解して、とにかく"勝たねばならぬ"状態に自らを追いこんだのは、決して責任感があるからではなかった。むしろ無責任だからこそ"勝たなければならぬ"と思いこんだのである」。それに比して石原莞爾は戦略思想、戦争学、歴史観をもった"特別の軍人"。「石原の世界最終戦争論とは、東洋文明の覇者・日本と西洋文明の覇者・アメリカとが最終戦争を行い、その後に世界に永久平和が訪れるというもの。中国との提携による新たなアジアの秩序づくりの論陣」「石原は日中戦争にも反対、太平洋戦争にも反対、長期持久戦争に反対、東條政権と徹底して対決」「津野田知重、牛島辰熊による暗殺計画」「石原にとっての"昭和維新"と2・26事件」「犬養毅の組閣の意味」「"話せばわかる"ではなく"話を聞こう"。"話の政治"の終わり」「"黒幕"の指導者を赦さない――渡辺和子の2・26」「瀬島龍三の東京裁判出廷と軍官僚体質」「吉田の11月3日憲法公布と天皇を守る防波堤たる憲法への思い」・・・・・。

歴史とともに現在の政治と政治家の任務を考える。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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