結婚して20年、52歳の加能鉄平は、たまたま妻にかかってきた弁護士からの電話に出て、驚愕の事実を知る。妻・夏代が伯母から34億円もの遺産を相続し、それが現在総額で48億円にもなっているというのだ。リストラ、左遷、そして今、身内の会社でも閑職に追いやられていた鉄平にとって、衝撃であるとともに、人生そのものを揺さぶられることになる。「なぜ妻はこれを隠し、手をつけないできたのか」――。それだけでなく、別居する長女の妊娠、長男の同棲等、鉄平の知らない秘密が次々に明らかになる。加えて大爆発事故を起こして加速する社内抗争。「俺だけが知らない。どいつもこいつも勝手ばかりして」との心の空洞は「俺はいったい何をしようとしているのか」へと人生そのものの根源的問いかけへと進んでいく。
「人生」「夫婦」「男女」「家族」「愛」「信頼」・・・・・・。大事件、大災害、生死の極みにはじめて顕わになる人間のコアー・核心。幸福感における男の「煩悩即菩提」、女の「生死即涅槃」の差異を浮かび上がらせている。