なんとも奇妙、荒唐無稽な物語。しかし、なぜか心持良いのは、主人公・朝霧夕霞が元気で優しい、情に厚く、突っ込んでいく魅力ある女性であるということ。こういう女性はたしかに居る。
就職に失敗し続けていた夕霞が国土交通省の臨時職員募集の貼紙を見つけ、採用されたのが、国土交通省国土政策局の「幽冥推進課」。ここの仕事は、道路、橋、都市などインフラ整備にあたって、「この世に未練があって、土地や建物から離れられなくなっている地縛霊を説得し成仏させること」だという。職員も辻神課長、火車先輩、百々目鬼女史しかおらず、皆妖怪。つまり夕霞は初の人間職員だ。
1章ではビルの屋上から飛び降りた無名のアイドル藍田ミサ、2章では長期出張を終え自宅へ車で帰る際、トンネルから無灯火で出てきたトラックと正面衝突した山田篤弘、3章では150年前の慶応年間、橋を守るための人柱となった少女(姫)――。いずれも未練を残してその地から離れられないでいる。
夕霞はそれに体当たりで挑むのだ。