自動運転「戦場」ルポ.jpg副題に「ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来」とあるが、社会が自動運転の進展によって大変貌し、「社会の近未来」をどう捉えるか。バラ色の楽観的な未来がすぐ来る訳ではなく、あまりにも多くの課題をかかえていることを現場から指摘する。きわめて的確な書だ。

自動運転(AV)技術は猛烈な世界的競争のなかにある。まず、自動運転車の開発の問題だ。"シリコンバレー組"は「完全なレベル5」を目指して自動車業界のイニシアティブを取ることを狙い、既存の自動車メーカーなどの"デトロイト組"は、「車間距離センター」「新時代の信号システム」など、具体的に「レベル2」の技術を徐々に積み上げるという路線をとる。"シリコンバレー組"のAVへの情熱は「世界の年間130万人の交通事故死をゼロにする」などのスローガンを掲げて突き進むが、現実には「人間には不注意や勘違いが付きもの」という人間観、「AIは統計データに基づく計算機であり、突発的な事象への対処は弱い」という問題がある。加えて、人間の運転するクルマと、機械が運転するクルマが混在する「過渡期問題」、「歩行者、気象変動等、イレギュラーに対しての安全問題」「原子力や遺伝子組替作物等にも見られる社会的認知、世間の許容の問題」「民間の技術革新の問題に止まらない交通全般の標準統一の問題」「都市インフラをAV時代にどう築いていくか、その過剰投資問題」「人間の自由な交通や日常生活を制限する場面が出てくること等の問題」「AVに伴うセンサー、演算素子、通信などの消費電力問題」・・・・・・。課題はヤマほどある。

ことは「人手不足時代」「人口減少・過疎高齢化時代」「所有から利用へというシェアリングエコノミー」「ラストワンマイルと駐車場と働く場所への公共交通全体の変化」「陸上輸送と自動隊列走行」など広範囲にわたる社会を激変させる問題であり、都市インフラ全般や交通網の大変化・再編成を促すことになる。「自動運転文明」ともいうべき可能性と困難さをあわせもつ、重大な局面に遭遇している。問題を広く深く把える時だ。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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