東京の郊外、十棟が並ぶ「ちぐさ台団地」。そこに草野球のチーム「ちぐさ台カープ」が結成されており、それぞれの人生模様が描かれる。人生は辛いこともあるが、いい。悔しいこともあるが、「どんまい」で生きていけば、そしてスポーツ仲間がいればなんとか乗り越えていける。
離婚して再スタートを切る洋子と中学生の娘・香織。ともに「負けず嫌い」で「いじいじと落ち込むぐらいならノーガードでも前に出る」という母娘だが、なんとこのチームに加わる。将大――プロで大活躍する有名投手・吉岡の元女房役、甲子園に出場した若者。田村――広島に要介護の親を抱え、週末に通うキャプテン。ヨシヒコ――生意気で嫌われてもカッコつけて生きる青年、野球はうまい。沢松――きわめて無口な職人肌、香織と同級の中学2年生。宮崎――札幌に残した家族を思う単身赴任サラリーマン。ウズマキ眼鏡の小倉――バントの達人だが、なぜかフルスイングにこだわる三振王。福田――息子の鍛え方に空回りする親父。橋本――三十路半ばの独身男。伊沢――亡き母を偲んでカレーライスを食べ続ける男。そしてこのチームをつくったカントク――広島の原爆で身内を失った老人。広島カープに熱烈な愛情をもつ人生練達の苦労人だ。
とくに洋子・香織の母娘のストレートと、カントクの味わいある緩い変化球がいい。重松ワールド全開。