ふと遭遇した出来事に、「なぜ」と問いかけることが、問題の深淵を覗くことになる。高校2年生の図書委員仲間の松倉詩門と僕(堀川次郎)。二人には、いつも奇妙な謎めいた相談事が持ち込まれる。快活だが裏を疑い策略的思考をもつ松倉、性善説的な真に受けたまま思考を掘り下げていく堀川は、互いを刺激し合いつつも信頼のなかで問題を解決していく。全6編。
「913」――。「金庫をあけるのを手伝ってほしい」と浦上麻里先輩に依頼を受け意外な結末に。「ロックオンロッカー」――。二人である美容院に行くことになったが、ふとした店長の一言が引っかかる。「貴重品は、"必ず"、お手元にお持ち下さいね」・・・・・・。そこから事件がひも解かれてゆく。「金曜に彼は何をしたのか」――。金曜日の夜、学校の職員室の前の窓が割られた。犯人に仕立て上げられた男のアリバイはあるのか、何をしていたのか。
「ない本」――。3年生の香田が自殺した。彼から遺書を預かっていたのに止められなかった男の苦悩から発せられた行動は・・・・・・。「昔話を聞かせておくれよ」――。6年前に死んだという親父の残した宝物を探す。さわやかさを感ずる結果と思わせるが、次の「友よ知るなかれ」で、松倉の家庭の秘密が明らかにされる。
二人の距離感をもった心の交い合いは、大人のもの。