まさに壮大なサピエンス全史、人類が進化し文明が発展してきたという進歩史観等の楽観的な前提自体を覆すサピエンス全史となっている。7万年前、アフリカの片隅で生きていくのに精一杯の"取るに足りない動物"であったホモ・サピエンスが、全地球の主として"万物の霊長"を自称し、食物連鎖の頂点に立って環境を征服。いかに都市を築き、帝国を打ち立て、広大な交易ネットワークを築き上げてきたか。しかしヘブライ大学歴史学教授のユヴァル・ノア・ハラリ氏は歴史を俯瞰しつつ、最後に2つの痛烈な疑問を突きつける。「私たちは以前より幸福になっているのか」「正真正銘のサイボーグ、バイオニック生命体に変身する超ホモ・サピエンス時代に突入する瀬戸際にある」である。「人間の力は大幅に増したが、個々のサピエンスの幸福は必ずしも増進しなかったし、他の動物たちには甚大な災禍を及ぼした」「私たちは何を望みたいか、望んでいるかもわからない。不満で無責任な神々ほど危険なものがあるだろうか?」と結ぶ。
「20万年前東アフリカでホモ・サピエンスが進化する」「7万年前、認知革命が起こる。虚構の"言語"が出現し、歴史的現象が始まる」「虚構、架空の事物について語り、創作する能力、言語が拡大する」「7万年前の認知革命から、1万2千年前の農業革命の期間、狩猟採集民は豊かな暮らしだった。大型動物が死滅していく」「農業革命で大変化。定住、家畜化、栽培化、人口増、贅沢の罠、家畜化された動物の悲劇、空間の減少と季節等の時間軸、神話と法制度が導入される」「書記体系(記号を使っての情報保存)、文字・数の体系の衝撃、秩序としてヒエラルキーと差別が生ずる(人類の想像上の産物)(カーストも白人・黒人も男女も)」・・・・・・。そして「最強の征服者・貨幣を生む(BC3000年紀半ばにメソポタミアで銀のシェケル誕生)」「グローバル化を進める帝国のビジョン」――。ここまでが上巻だ。
下巻は「宗教という超人間的秩序」「無知の発見と近代科学の成立」「科学と帝国の融合(なぜヨーロッパは世界の覇権を握れたか)(19世紀のヨーロッパの支配は産業・科学・軍事複合体)(征服の精神構造)」「拡大するパイという資本主義のマジック(東インド会社のやったこと)(自由主義資本主義の強欲)」「国家と市場経済がもたらした世界平和」・・・・・・。サピエンスは「何をやってきたのか」「何を望むのか」――。副題は「文明の構造と人類の幸福」。