東京・砂町銀座商店街の「おかずの田野倉」。おいしいコロッケなどを作る惣菜屋にアルバイトとして入った柏木聖輔。20歳の大学生だったが、わずか3年で父、そして母が急死し、大学もやめることになる。
「一人の秋」「一人の冬」「一人の春」「夏」の4章。一年間の話だが、聖輔をはじめとしてほとんどが善人。「おれは青葉が好き」が、この本の最後のセリフだが、高校同期の青葉の元カレ高瀬涼と親戚の基志ぐらいが"性悪の人"。「人間捨てたものじゃないよ」と心がホッコリする。「大切なのはものじゃない。形がない何かでもない。人だ。人材に代わりはいても、人に代わりはいない」「道を譲る。準弥くんにベースを譲る。店のあれこれも譲る。でも青葉は譲らない」・・・・・・。
たしかに「ひと」だ。