白き糸の道.jpg時は幕末。貧しい養蚕農家に生まれたお糸は手を抜かずに突き進む女性。数えで十歳のお糸は、歌川貞秀という旅絵師と、中村善右衛門という蚕種商に出会い、今までとは全く異なるものが世にあるのだと知る。ある時、医者が体温計を使って熱を計ることを知り、「体温計をお蚕飼いに使えないか」と思いつく。江戸に飛び出して、善右衛門と共に周りの助けを得て、苦労しながらも養蚕が量産し易いように、寒暖計を養蚕業用の蚕当計に作り上げていく。

しかし、これはお糸の「寒暖計」「蚕当計」の成功物語ではない。江戸時代、しかも因習深き地方において、志をもって生き抜こうとした一人の女性の物語だ。江戸に何度も飛び出す。しかも親や自分の娘を村に置いて。「蚕当計」は作り上げたものの、少しも広まらないし、彼女自身への蔑みは繰り返される。とくに娘からの反発は凄まじい。しかし、何度も何度も体当たりで挑み、ついに「蚕当計」も村からの「信頼」も勝ち取る。何といっても娘と親子の会話ができるようになる。

私は、女性は男性よりも真剣で、一途で突っ込んで結果を出すと思っている。子供に対する愛情も深いし、仕事についてもやり切る力は凄い。お糸は決して良妻賢母でも、肝っ玉母さんでもない。"困った人"といえるかもしれないが、周囲とぶつかり、葛藤しながらも突き進む女性の姿が、黒船が浦賀沖に来る日本近代の黎明期を背景に見事に描かれる。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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