「カッコいい」とは何か.jpg「カッコいい存在とは私たちに"しびれ"を体感させてくれる人や物である」――。「カッコいい」とは、じつはかなり本質的な生き方の問題だ。「『カッコいい』は、民主主義と資本主義とが組み合わされた世界で、動員と消費に巨大な力を発揮してきた。『カッコいい』とは何かがわからなければ、私たちは、20世紀後半の文化現象を理解することが出来ないのである」という。「カッコいい」という概念は、そもそも何なのか。それを、歴史的に、文明論的に、「クール」「ヒップ」「ダンディズム」から、キリスト教や英雄崇拝の事例から、文学や芸術・美学から、広範かつ本源的に剔抉している。

「カッコいい」の条件――。「魅力的、生理的興奮(しびれる体感)、多様性、自分にはない他者性、非日常性、理想像、同化・模倣願望、再現可能性(憧れていた存在のカッコよさを分有できる)」「カッコいい存在は、マスメディアを介したその絶大な影響力故に、反対の立場に立つものを脅かす」「カッコ悪い存在は、人から笑われ、侮られ、同情され・・・馬鹿にされる。まず感じるのは羞恥心だ」「カッコいいへの同化・模倣願望をカッコ悪いと見做されている時のカッコいいへの復帰・同調願望が一体となって作用し、カッコいいは民主主義と資本主義とが組み合わされた世界で、異例の動員と消費の力を発揮してきた」「武士道的な義理は"人倫の空白"を埋めるために求められたが、戦後社会においても強欲に対する戒めの一種の精神主義に引き継がれ、『カッコいい』存在への憧れが、人としていかに生きるかという"人倫の空白"を満たす社会的機能をもった」・・・・・・。

「ヒップ(勇気があり、好奇心に満ち、クールで執着がなく、権威的でない。自分自身になる意志をもつ)とスクエア(体制側で、責任感が強く、真面目で、ルールを守り・・・・・・単調な生活を守って生きる)」「ロックコンサートの"しびれる"ような体感」「ダンディズムの三世代(貴族的オシャレから"さりげなさ"、そして絶対的単純の品位)」「(最近の)カッコいい女(男に媚びない、知的で自由、何が自分にとって大切かを知り抜く)」「古代ギリシャ以来の男らしさ(死を恐れず、敵と戦う勇気、正義のために体制に背く反抗、説得力のある言葉を発する力、セックス・アピール、家族を守ること)」・・・・・・。

「日本の『カッコいい』にせよ、『クール』にせよ、『ヒップ』にせよ、『ダンディズム』にせよ、共通した美徳の一つに自己抑制がある」・・・・・・。戦後社会が人々を自由に放り込んだがゆえに、"人倫の空白"が生まれ、理想像を追い求めることになっていた。「カッコ悪くない」「ダサい」と目されることの羞恥心や屈辱感がSNS社会で加速され、動員される危険性は当然ある。多様性のなかの画一性。そうした危機感をもちつつ自立して生きる。変化する社会のなかでいかに生きるべきかを考えさせる充実した著作。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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