8050問題の深層.jpg大変な事態となっている。副題は「限界家族」をどう救うか。8050問題――80代の高齢の親が、50代の無職やひきこもり状態の子どもと同居し、経済的な困窮や社会的孤立に至る世帯が増えている。高齢の親にとっては、認知症・病気・1人暮らし・子どもからの暴力などの問題があり、壮年期の子どもにとっては、ひきこもり・就職難(就職氷河期にもあたっていた)・非正規雇用・未婚の増加も要因としてある。加えて、外からの支援を拒否する傾向が親にも子にもある。このような「高齢の親と子どもの同居」は、まさに共倒れする「限界家族」の臨界点にやがて達する。深刻である。

2019年3月、内閣府の調査によれば、40歳から64歳までの"ひきこもり状態"にある人は全国で61.3万人に及び、うち男性が76.6%という。しかも今、ひきこもりの長期化・高齢化の時代を迎えている。本書は「ひきこもり支援の糸口」を具体例で示している。「短期解決を焦る両親に窓口が助言」「段階的な支援の仕組み――居場所型支援、就労支援、医療での支援」などだ。中高年のひきこもり問題は、これまでの子ども・若者支援の課題がもち越された部分も大きいので、若年からの息の長い支援が不可欠だ。また、誰とも話をしないひきこもり状態の人に、"断絶""孤立"を乗り越えて"接点""関係"をつくることが支援にはまず重要となる。

「他人に迷惑をかけたくない」「生活保護を受けるくらいなら死ぬ」――迷惑をかけて生きていくのか、死ぬのかという極端な二者択一の前に立ちすくんでいるひきこもりは、その解消という目標から離れて、日常の困りごとや要求を拾い上げたり、猫の世話やゴミ出しなどでよい、接点をつくり、不安を減らしていくことだ、という。公的な支援組織やNPOによる伴走型支援の大切さだ。そして、就労支援も本書にある「料理が得意だという情報から"支え合い料理会"などの場で"役立ち感"を感じてもらうということを経て、初めて居酒屋に勤める」など、丁寧な対応が大切だ、という。

8050問題には、「子離れ・親離れのタイミングはいつなのか」という問題がある。かつては、成人すると家を出た。また結婚年齢も低かった。それが現在は「成人後も親子関係が長く続く時代」となり、寿命も大きく延びた。そして経済、社会の変化、各個人での"つまずき"も多い。どうやって長期の親子関係を乗り切っていくのか、という未知との遭遇だ。

「一般社会から離脱した人を支える仕組み」「若者自身が自由と責任を引き受けていける社会の仕組み」「親子それぞれが新しい生活を実現できる支援の仕組み」への挑戦。「戦後型家族観」を越え、「親子共依存(過剰な)」を越える依存先を増やす挑戦だ。閉ざされた家族内の人間関係に"新しい風"を吹き込むという大きな課題に直面している。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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