未来への大分岐.jpg「資本主義の終わりか、人間の終焉か?」が副題。今を「未来への大分岐」と危機感をもって把える。斎藤幸平氏と「なぜ世界は存在しないのか」の哲学者マルクス・ガブリエルと新しい権力との対峙を社会運動のなかで模索する政治哲学者マイケル・ハート、ポストキャピタリズムを展開する経済ジャーナリスト・ポール・メイソンの3人との対談。きわめてラジカルな討論だ。しかし、世界的な経済低迷、国家負債の増大、気候変化と災害の激化、AI時代とGAFAの跳梁と支配、先進諸国における格差の拡大と貧困化、トランプ現象、民主主義の機能不全などをどう脱出するか。世界の「大分岐の時代」と把え、分析し、模索する。カール・マルクスの問いかけたものも語る。

マイケル・ハートは「電力や水、知識や情報、自然や地球という環境そのものを<コモン>として資本の支配から取り戻し、自分たちで管理していく」「民主主義を危機から救い出すためには<コモン>を自分たちのものとして共同決定していく経験こそ鍵になる」「上からの社会変革ではなく、下からのコミュニズム。苦しみや欲求を分かち合う連帯によって新しい未来をつくる」という。マルクス・ガブリエルは「『ポスト真実』とは『客観的な事実』の危機であり、相対主義の時代であり、それは事実があるところで事実を見ないという民主主義にとって危険な考え方である」「フェイクがあふれ、プロパガンダがあふれ、客観的事実が軽視される社会となっている」「私たちが『人権』と呼ぶ普遍的価値の唯一の基盤が切り崩されてはならない」「新実在論で民主主義を取り戻す」「世界は存在しない、ユニコーンは存在する。人間の尊厳は現実にあらゆる人間に属しており、人権も存在する」「未来への大分岐――環境危機とサイバー独裁」「危機の時代の哲学、事実を真摯に受け止めて態度調整をするための哲学的土台を提供するのが新実在論。それは『ポスト真実』と相対主義に終止符を打つ宣言だ」という。ポール・メイソンは「資本主義は情報テクノロジーによって崩壊する。成長の鈍化と生産力の過剰、利潤率の低下は明白」「ポストキャピタリズムと労働。人間が強制労働そのものから解放される"可能性の世紀"に私たちはいる。持続可能な協同型経済の完成形がポストキャピタリズム。しかし、これに抵抗する資本の動きが市場独占、プラットフォーム資本主義、ブルシット・ジョブなどで顕著だ」「ポストキャピタリズムの未来に向け、独占の禁止、再生エネルギー100%の道、AIの暴走阻止への普遍的原理たるヒューマニズムの確立、利潤だけを追求するのではない下からの社会的協働の活発化」などを提唱する。

「メイソンやガブリエルは、非人間化に対抗して、『人間とは何か』をいうことを明らかにしながら、普遍的人権や普遍的価値を積極的に擁護するヒューマニズムの立場に移行している」と斎藤氏は語る。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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