データの世紀 日本経済新聞データエコノミー取材班=編.jpgデータの争奪戦が激しい。ヒト・モノ・カネが生み出すデータ資源が世界を激変させている。GAFAやBATが世界を席巻し、GDPのかなりの部分を食い、そしていつの間にか個人のデータが吸い上げられ、それ自体が価値となって売買される。データの世紀、データエコノミーの時代だが、当然、光と影がある。一昨年、フェイスブックから8700万人の個人データが流出し、政治にも影響を与えたのではないかといわれたり、日本でも昨年、就活サイト「リクナビ」が内定辞退率の予測という重要かつデリケートな個人データを企業に販売していた問題が発覚したり、GAFA等の規制に慎重だった米国も、規制強化に転じ始めている。本書は、同種の本のなかでも、より現場から、より現実的に、取材班がそれこそ自ら体験(「やってみた」コラム)をして現状を浮き彫りにしたなどの特徴がある。リアルに迫って緊迫感がある。

「リクナビ問題」の衝撃――自分の内定辞退率が算出されて販売されている。違法であり、プラットフォーマー規制にも一石が投じられた。「世界が実験室」となり、新たなイノベーションがデータ資源の使い道や価値を問い直す。「エコーチェンバー(共鳴室)現象」――SNSで自分と似た意見を持つ人につながると次々に同じ意見が跳ね返って偏見を増幅していく。政治観を変えられてしまうし、「いいね!」の世論操作がされていく。「GAFA規制」――①プライバシーを守る個人情報保護②健全な競争環境を保つ為の独禁法③適切に課税するための法人税、のあり方の3分野だ。データ資源が爆発的に増え"私"が奪われる――利便を取るか"私"を守るかだが、「ターゲティング広告」は凄まじい。またAIが人を格付けするスコアリング技術が急速に発展している。偽動画のディープフェイク、AIによる美人認定ソフト。一方で、スコアに一喜一憂するウーバー運転手。不正出品に対する審査の甘さがアマゾンの足をすくう。

「AIの56%がデータ不足で苦悩」、しかも保存形態がバラバラで、企業が苦しんでいるという現実も明らかにされる。使えるAIへ、学ばせ方の模索だ。また、データと利益が一握りのIT巨人に集中する「新たな独占」が出現したが、放置すれば市場がゆがみ、過剰な規制は成長を阻むというジレンマに世界は悩む。またIT巨人に対して、企業が悪質な情報漏洩を起こせば賠償請求できるという消費者プライバシー法がカリフォルニア州で今年施行されるなど、個人が立ち上がる動きが始まった。データ版TPPなどデータ経済圏の動きもある。

「テクノロジーを鍛え、正しく進歩させる」――新ルールも混沌とするなか、とてつもない課題に直面している。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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