類 朝井 まかて.jpg文豪・森鴎外を父にもった末子・森類の幸福と不幸、家族の真実――。子どもの人格をどこまでも尊重し、親切を尽くした慈愛あふれる鴎外、子供が直面する不条理や理不尽を引き受け、"悪妻"と非難されたり衝突した"世間の父親"のような損な役割を果たした母・志げ。しかし夫を愛し、恋い続けた「鴎外にこの妻あり!」との思いが読み進んで感ずる。類の姉の自由思考の茉莉、しっかり者の杏奴はともに文才を生かす。頼りなく生活力もなかった"お坊ちゃん"の類と二人の姉とは「森家のきょうだい(森類)」をめぐって"口もきかない内輪揉め"状況も続くが、文豪の子としての襟度や良家の育ちの良さが"愛情の絆"として滲み出る。

「あなたは生存競争に参加せず、悠然と暮らしたいだけの人なのよ。森鴎外というお人が充実し過ぎていたんだわ。あなた、お父様に全部持っていかれてしまったのよ(妻・美穂)」「父親が偉大すぎて、息子は何一つその天資を受け継げなかった」「僕の、本当の夢。それは何も望まず、何も達しようとしないことだ。質素に、ひっそりと暮らすことだ」「子供たちがこの母親(美穂)に寄せる愛情と信頼は、類がたじろぐほどに深い。生活能力と野心に欠けた夫を支え、旨い飯を拵え、清潔な衣服と寝床を常に整え続けてきた」・・・・・・。

父とあまりにも違う人生、異なる生き方――。「僕はこの日在の家で、暮らしているよ。何も望まず、何も達しようとせず、質素に、ひっそりと暮らしている。ペンは手放していない。波音を聞きながら本を読み・・・・・・」。

茉莉、杏奴、そして母。大正11年(1922年)60歳で没した文豪・鴎外の妻子それぞれが、背負い格闘した姿とその心性が描かれる。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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