「AI・IoT時代の社会革新」という副題と、「第1章 なぜ日本からはイノベーションが生まれないのか」「第5章 いまこそ『変われる国・日本』へ」の表題で、本書でいわんとすることは明確だ。モノがインターネットにつながるIoT時代、そしてAIの時代。そこで大事なのは「オープンにつながる」こと。しかし日本は機器が作ったメーカーのアプリにしかつながらない「クローズ志向」。IoT化の核となるAPIのオープン化で初めてIoT対応機器となる。「イノベーションではチャレンジが必要。"絶対安全""絶対大丈夫"などということは複雑化した現代社会では無理だが、日本ではすぐ"誰が責任"とかになる」「日本は"変えることを恐れる"傾向が強い。責任感が強くて不安に弱い国民。ワクチンでも、接種した被害を過剰に捉え、何もしない傾向になる。法律も大陸法方式、やっていいことを書くポジティブリストの考え方で、それ以外はダメ。米国とは反対」「モノを売るのではなく、サービスを売る。IoTで機器がつながりサービスもオープンAPIで連携すればもう単なるIoTを越える」「重要なのは、技術の問題というよりどうシステムをデザインするか、そして社会のデザイン、会社のデザイン、生活のデザインをするか、という哲学。そこが日本は得意でない」「オープンデータ化で後れを取る日本。人が読む情報公開とコンピュータが読むのが前提のオープンデータは別物」「日本はいまだに政府も地方自治体もデータは紙ベース。紙もハンコも断捨離せよ」「日本の問題は技術ではない。リスクを取っても挑戦するというマインドセット、社会を変える勇気、覚悟だ」・・・・・・。まさに「手法でなくやり方レベルから根本的な変革を起こそうという姿勢こそがDXの本質」、その意味では新型コロナが強制的に「変わらざるを得ない」状況を作り出している、今がチャンスだという。
坂村健先生がけん引するINIAD(東洋大学情報連携学部)も視察し、この先駆的挑戦を体感した。まさに文・芸・理の融合、リカレント教育の必要・不可欠からきている挑戦だ。また歩行者移動支援、観光や災害弱者支援になる「東京ユビキタス計画・銀座」を視察、現場で説明も受けたこともある。坂村先生は1980年代からオープンなコンピューターアーキテクチャーTRONを構築し、このTRONは米国IEEEの標準OSに採用され、IoTのための組込みOSとして世界中で使われているものだ。デジタル化が全ての方面で叫ばれ、遅れている日本の変革が迫られている今、AI・IoT時代の本質を見誤らないように、そして遅れるな、変革できる、との指摘は重い。