51ARVT6CPWL__SX326_BO1,204,203,200_.jpg先日、テレビ映画(BS-TBS開局20周年記念ドラマ)となった池波正太郎の「上意討ち」。これを含む11の短篇時代小説。テーマは幅広く多岐にわたり、バラエティに富み、しかも人間の心の真髄に迫り、はじける。善悪同居の人間らしさ、そのなかで「不器用な男」と「したたかで強(靭)い女」が際立つように思える。人間臭く、深くて、じつに面白い。

表題の「上意討ち」は、横暴な殿様の尻拭いのために、敵討ちを命ぜられた森十兵衛。出奔した相手の田中源四郎をどうにも「斬りたくない、会いたくない」と思ってしまう。そうした心を抱きつつ、追い続ける武士の心情を描く。「恋文」と「刃傷」は、ちょっとした"いたずら"が、人生の歯車を完全に狂わせて重大事件にまで行き着く様を描く。恐ろしいまでだが、こうしたことはある。「ト伝最後の旅」は信玄と塚原ト伝の達観した境地での心の絆、川中島合戦が描かれる。とてもいい。「剣友 渡辺曻」「色」「龍尾の剣」は、幕末の新選組、近藤勇、渡辺曻、土方歳三、永倉新八等を描くが、他の篇とはトーンが全く違って時代小説そのものの感を受ける。解説の佐藤隆介氏によると、「これらは20年も30年も前の若き日の池波正太郎の作品」だという。しかし、近藤、渡辺、土方、永倉らの人間性が浮き彫りにされている。

窮乏する藩の財政にもかかわらず乱費する領主の死後、藩を守ろうと奔走する江戸留守居役の苦労話と女(疼痛二百両)、「妖魔に魅入られた、と思うよりほかはない」と大失敗をした筒井土岐守忠親と農婦・おさとの物語(「晩春の夕暮れに」)・・・・・・。他に「激情」「雨の杖つき坂」がある。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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