52ヘルツのクジラたち.jpg両親が弟を溺愛し、母の連れ子である自分には食べものを満足にくれず、殴られ続けた女性・三島貴瑚。その義父が介護となれば全ての世話を押しつけられ「こいつが病気になればよかった。こいつが死ねばいいのに・・・・・・!」と母から罵られた貴瑚。その地獄から救い出してくれた親友の牧岡美晴とアンさん(岡田安吾)。抜け出して大分県の小さな海辺の町に来た貴瑚は、母に虐待され言葉まで失った「ムシ」と呼ばれていた少年・愛(いとし)と出会う。虐待され、凄絶な辛い過去を背負い、愛された記憶もない二人の魂は邂逅し共鳴していく。

生きることが苦しい貴瑚らの心に沈潜する「奥底の寂しさ」が、息苦しいほどに伝わってくる。そこに手を差し延べるアンさんや美晴の力、一條の光なくして、人は生きていけないことが追い込まれるように描写される。「魂の番(つがい)って知ってる? ひとには魂の番がいるんだって。愛を注ぎ注がれるような、たったひとりの魂の番のようなひと。あんたにも、絶対いるんだ。あんたがその魂の番に出会うまで、わたしが守ってあげる」――。アンさんが貴瑚に、貴瑚が言葉がしゃべれないゆえに52と呼ぶ愛に「魂の番」を語るのだ。

52ヘルツのクジラ。普通のクジラと声の高さ、周波数が全く違う52ヘルツで鳴くクジラ(普通は10~39ヘルツだという)。世界で一頭だけの最も孤独なクジラ。その声は広大な海で確かに響いているのに、受け止める仲間はどこにもいない。誰にも届かない歌声をあげ続けているクジラは、存在こそ発見されているけれど、実際の姿は今も確認されていないという。「本当はたくさんの仲間がいるのに、何も届かない。何も届けられない。それはどれだけ、孤独だろう」・・・・・・。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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