食料危機 井出.jpgこのコロナ禍で、食料危機は世界最大級、しかも喫緊の課題であることは、2020年10月、国連WFP(国連世界食糧計画)がノーベル平和賞を受賞したことからも窺える。現在、世界では十分に食料を確保できない人は9億4000万人、なかでも極度の食料不安を抱える人は約2憶7000万人で、コロナ禍以前より急増しているという。アフリカでの食料危機は厳しく、日本でも食品ロスが大きな課題となっているように、「大手コンビニ1店舗で、1日1万円以上の食料を捨てている」現状がある。

その原因は単なる「人口増」などで片づけられるものではない。本書ではまず「分配の不平等」をあげる。貧困(経済力がなければ食料が購入できない)、紛争、自然災害、経済の停滞で食料が入手できないことは、イエメンやコンゴ等でも明らかで、そこからまた暴動・紛争が起きている。次に「搾取主義の食料システムとヒエラルキー(高所得国が低所得国から搾取する構図、強者が独占し弱者に分配されない)」「食品ロス(食べ物の3分の1が捨てられている)」が指摘される。そして生産面や利用面から考えると「気候変動(水不足や高温での旱魃)」「ミツバチやその仲間の減少」「バッタの害」「バイオ燃料・バイオエタノール(バイオマスがカーボンニュートラルであっても可食部まで使われている)」「肉食の増加(牛1キロあたり11~13キロの穀物が必要)」がある。そして「新型コロナが脆弱な国に打撃を与えること」「人口が2050年には97億人まで増加すること」など10の原因をあげている。

その対処方法は、それらの原因を減少させることに尽きる訳だが、「食品ロス削減(賞味期限を延ばす技術革新、30・10運動、食べ残しへのペナルティ)」「食料安全保障の『利用可能性』」「消費者啓発」「昆虫食」「省資源化の取り組み、培養肉の開発」「食のシェア(フードバンク、家庭で余った食べ物を必要な人に渡すフードドライブ、おてらおやつクラブ)」「生ごみの資源化(リサイクル)」等、きわめて生活の身近なことまでの具体例をあげる。そして最後に「食への危機感も敬意も足りない日本人」「貧困、飢餓を1、2とするSDGsについて日本は周回遅れだ」と厳しく指摘、意識改革を促し、「私たちができる100のこと(アクション100)」を例示する。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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