推し、燃ゆ.jpg芥川賞受賞作。「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。・・・・・・それは一晩で急速に炎上した」――。主人公の高校生「あたし(あかり)」は、5歳の頃からアイドルグループ「まざま座」のメンバー上野真幸のファンで、いまや徹底した命にかかわるほどの推し。「理由なんてあるはずがない。存在が好きだから、顔、踊り、歌、口調、性格、身のこなし、推しにまつわる諸々が好きになってくる」「皆が推しに愛を叫び、それが生活に根付いている」「推しを推すことがあたしの生活の中心で絶対で、それだけは何をおいても明確だった。中心っていうか、背骨かな」「推しから発されたもの、呼吸も、視線も、あますことなく受け取りたい。・・・・・・朝、推しくんが耳許でおはようと言うんですよ。目が覚めて最初に聴くのが真幸くんの声なんですよ」「体からだるさが溶け出していって、芯から温もって、ああ、きょう、わたしなんとか生きていけるなって思います」「推しは命にかかわるからね」・・・・・・。日常も勉強もバイトも、みんなのようには全くできない「あたし」。そんな生き辛さ、他との拭い難き違和感、孤独感をなんとか凌いで進めるのは唯一、「推しを推すこと」だ。その推しが、ファンを殴り、グループは解散して芸能界から去っていく。「あたし」は推しがいなくなる衝撃を受け「生きていけない」と思いつつも、周りの大人の顔色をうかがい続けた彼が「自分で光を発し始め」、そして今、引退を自ら決断したことに思いを馳せる。なぜ推しが人を殴ったかはわからない。しかし推しの決断を思うなかで「今までの自分自身への怒りを、かなしみを、叩きつけるように振り下ろす」と思うのだ。著者もテーマも若いがリズム感ある熟練の文体。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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