高校時代は青春ドまん中。友情も恋も葛藤も本格化する。我々の時代は、受験勉強を中心とする普通高校と、高卒として社会に出る商業高校・工業高校・農業高校が生きており、社会に旅立つ前の貴重なエネルギー溢るる時、それが高校時代だった。「赤い夕陽が校舎を染めて・・・・・・」の舟木一夫の「高校三年生」は、私の高校三年生の時でドンピシャ。今も同級生が集まるとこのヒット曲を皆で歌う。
さて今の高校生の青春は――これをジャニーズの加藤シゲアキが書くというのだから興味が湧く。よくある富裕と貧困、暴力、セックス、屈折の青春群像ではない。「オルタネート」という高校生限定のマッチングアプリを軸として、調理・園芸・音楽等のクラブとアプリで繋がる青春物語。全国に配信される「料理コンテスト」と「文化祭」がクライマックスになる。
円明学園高校を舞台に、調理部部長の新見蓉(いるる)、オルタネートを心奉する伴凪津(なづ)、大阪の高校を中退してかつてのバンド仲間の豊と会いに上京するドラムが命の楤丘尚志の三人が主人公。三人三様の青春が、料理甲子園のような「ワンポーション」と「文化祭」に収斂されていく。恋とともに、確執のあった友や家族との関係も融けていく。SNSを介した現代的な「繋がり」と、イベントに協力して挑むなかで生まれる「繋がり」。この二つの「繋がり」を通して、成長していく高校生の姿はすがすがしい。