歴史探偵 忘れ残りの記.jpg半藤一利さんが今年1月、亡くなった。絶筆となった「あとがき」で「自分で勝手に生涯のテーマと決めている昭和史や太平洋戦争ばかりではなくて、物書きとなったばかりに新聞のコラムや趣味的な雑誌の連載を頼まれたりすることも多くなった。これまで乱読のお陰もあってか、そこで仕込んだ知識を利用して書くのが楽しくなり、ホイホイと引受ける。・・・・・・ただただ昭和史と太平洋戦争の"事実"を探偵することに若いころから妙にのめりこんできて、一人でコツコツと続けて、いつの間にか90歳の老耄れとなってしまった」「井上ひさしさんが色紙だけに書いたという彼自身の『心得三条』――『むずかしいことをやさしく やさしいことをふかく ふかいことをゆかいに ゆかいなことをまじめに書くこと』の秘術を使って書いたエッセイをまとめたものが本書」といっている。「まえがきに代えて」では「生涯読書のすすめ」「悪ガキの少年時代から本好きであった」といい、とにかく人生そのものが、接するもの全てに"好奇心"と"探究心"をもって「時代とともに歩んだ」ことがよくわかる。凄い。

「昭和史おぼえ書き(勅語と詔書と勅諭、上野高女のストライキ、敗戦後一夜明ければ、魔物をつくった人類、神風いろいろ)」「悠々閑々たる文豪たち(隅田川カッパ合戦、ハンケテとハンカチ、欠伸という字、和製漢語のはなし、露伴『五重塔』のモデル、知らぬ顔の半兵衛)」「うるわしの春夏秋冬(『花より団子』のとき、土用の丑の日とは、秋の夕暮れ、師走とつごもり)」「愛すべき小動物諸君(蝉の一声、『狐の嫁入り』とは、本物のハチ号の話)」「下町の悪ガキの船出(悪ガキ時代の言葉、あぐらと正座、向島界隈)」「わが銀座おぼろげ史(無敵鉄牛大行進、アイスクリーム、みゆき通り、仮採用のころと坂口安吾、数寄屋橋、時計のある塔、長井代助と銀座、じじいの嘆き、文士劇、早朝の銀座風景、展覧会紳士、春風銀座乃道)」――。じつに味わい深く、面白い話が続く。謹んでご冥福をお祈りいたします。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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