ベルリンは晴れているか.jpg1945年7月、2か月前にヒトラー総統は自殺し、ナチス・ドイツが降伏、戦争に敗れ荒廃したベルリン。米英仏ソの4か国の統治下におかれたが、ソ連と米英仏は対立状況にあった。街は完全に破壊され、生活は極度の困窮。ナチスに弾圧・虐殺されたユダヤ人や共産主義者は、絶望から脱する窓は開いたもののその傷は回復できないほど深く、心に絶望の刃を突き刺したままだった。破壊され絶望のベルリン――。そんななかでドイツ人で17歳の少女アウグステ・ニッケルの恩人であったクリストフ・ローレンツが、ソ連領域で米国製の歯磨き粉に含まれた青酸カリによって不審死を遂げる。ソ連のNKVD(内務人民委員部)大尉ドブリギンはアウグステに不審の眼を向けつつ、クリストフの妻フレデリカの甥エーリヒ・フォルストに訃報を伝えるよう仕向け、元俳優で泥棒のファイビッシュ・カフカを道連れ役とする。事件の真相は・・・・・・。街も人心も破壊され尽くしたベルリンを舞台に、二人は思惑を胸に秘し不安な旅を始める。

敗戦直後のベルリン。ありとあらゆる狂気が全ての人の人生を奪い去っていた。戦争と敗戦の荒廃した街と人心。ユダヤ人や障害をもつ者への想像を絶する弾圧・虐殺。裏切り・告発で生き残ろうとする者たちとスパイ・陰謀・・・・・・。極限、極致の姿が描写されて息苦しい。戦争と狂気が何をもたらしたか。そしてこの毒殺の思わぬ結末が明かされる。空を見る余裕もない人々・・・・・・。「ベルリンは晴れているか」の表題が読み終えた時に、「確かに・・・・・・」と思えてくる。スケールの大きい傑作。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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