東京・府中市内の多摩川の河川敷で発砲事件が発生。弾丸を調べたところ22年前に府中市で起きたスーパー「いちまつ」強盗殺人事件(店員3人が射殺)に使用された拳銃の線条痕と酷似していることがわかった。迷宮入り事件の捜査が一気に動き出す。発砲事件といちまつ殺人事件の関連捜査を命じられた警視庁捜査一課の刑事・日向直幸。じつは22年前の事件は、日向直幸の父、ケタ外れの鬼刑事の日向繁が担当した事件だった。しかも父・繁は、捜査にのめり込み、妻子に激しいDVを働き、家庭を崩壊させた男でもあった。母は若くして死亡、直幸は父を憎み続け、10年も全くの音信不通だった。
捜査を進めると、父・繁だけは警視庁をやめたあとも、常軌を逸した執念をもってこの事件を追い続けていたことが判明する。父子ともに人生を狂わせた事件の黒幕を追い詰めていく。通常は"愛憎の父子"というところだが、殴り合いの"憎"ばかりが目立つ警官親子の、執念と復讐の凶悪のサスペンス。「鬼哭」とは「鬼が哭く」、死人の霊魂が恨めしさに泣くこと。