昨年9月に亡くなった西川善文三井住友銀行元頭取――。2013年~2014年にかけてのインタビューをまとめたもの。1980年代からプラザ合意、バブル崩壊、金融危機、不良債権処理・・・・・・。経済は激動、企業は改革を迫られての大変な荒波に襲われるなか、住友銀行を率いてどう乗り越えてきたか。日本郵政社長の時も時折り話をしたが、まさに"ラストバンカーの遺言"といえる「仕事と人生」だ。
「仕事ができる人の資質とは何か。頭の中をきちんと整理整頓できる人、物事をシンプルに考えることのできる人」「完璧な答えまでは追求しない。70点で手を打つ」「何もかも自分で引き受けない。他人の力を借りる」「得意分野を持っている。粉飾決算を見抜くという得意分野を活かして、調査部時代から不良債権処理に関わった」「責任を取る覚悟が勇気を生み出す」「上司に恵まれる」・・・・・・。
「部下がついてくる人――。自ら動く、率先垂範を忘れるな」「難しい問題に直面したとき、上に立つ者が火の粉をかぶってでもやらなければ、危機を打開できない。不良債権は私が担当役員としてつくったものではないから責任も何もないが、処理の陣頭指揮をとり、退任した。引責辞任ではないかといわれたが?」「人任せではリーダーたりえない」「叱るときは叱り、褒めるときは褒める」・・・・・・。
「仕事ができる人・・・・・・。行動しないようでは失格」「常に現場を見る。机上でわからないことが現場にある」「先手を取って禍根を断つ」「特別な人脈より有効な人脈をもつ」「仕事というのはスピードが重要な要素」「状況が悪いと逃げるバンカーは下の下。取引先の悪い状況を脱出するために、どういうお手伝いをするかを考え、提案するのが本来のバンカーの仕事。相手が苦しい時こそしっかりした提案を」「成功がもたらす甘さに惑わされるな。成功ではなく苦労に学べ」「ごまかす会社は立ち直れない。粉飾決算をしているかどうかを見抜くこと(早く整理した方がいい会社)」「"一緒に頑張る"はかえって危険」・・・・・・。
別子銅山から始まる住友。公害解決に戦った伊庭貞剛。別子を離任する時、「五カ年の跡 見返れば 雪の山(「月と花とは人に譲りて」と友人・品川弥二郎が下の句を加えた)」と詠んだ。また「事業の進歩発展に最も害をするものは、青年の過失ではなくて、老人の跋扈である」として57歳で退いた。「この人が上にいれば大丈夫という安心感――堀田庄三」・・・・・・。まさに修羅場に身を置いた"不良債権と寝た男"の「仕事と人生」。