麻薬密売に臓器密売が加わり、闇のなかで凄まじい殺人が繰り返される。世界を舞台として展開される凄絶な暴力の叙事詩。資本主義の闇の底でうごめく凶悪犯罪と、生きた心臓を神に捧げるという血塗られたアステカ神話が交錯する。あまりの恐怖と欲望、ド肝を抜く獣性がむき出しにされ、こんな世界があり得るのかと、文明の底に叩き落されるような感覚に襲われる。どこに連れていかれるのか全く不明、圧倒的な迫力小説。
アステカの狂信者の祖母に、滅びた王国の血と神話を通して育てられ、カルテルに殺された父の復讐を誓うメキシコ人のバルミロ。一方で、メキシコの町から川崎に逃れてきた母と暴力団員の父の間に生まれたコシモ。殺人事件を起こし少年院に入ったコシモだが、出院後、雇われた工房を通じて二人は出会う。バルミロは、カルテルに君臨した麻薬密売人だが、日本人の臓器ブローカーとの出会いによって国際的な臓器売買ビジネスを始めていく。そして、裏社会の凶悪犯罪が、"子どもの心臓をくり抜く"という陰の恐るべき世界に行き着いていく。凄まじい凄惨な殺人が息つく暇もなく描かれていく。