他人の明日の未来が見える「先行上映」という不思議な力をもつ中学校の国語教師・檀千郷。彼に迫り来る出来事・事件と、女子生徒・布藤鞠子の書く小説が交錯する。小説からロシアンブルとアメショーと名乗るネコジゴハンターが抜け出す。あたかも照明とガラスを使って別の場所の存在を観客の前に映し出すペッパーズ・ゴーストのよう。現実とバーチャルが入れ乱れるなか、"テロ事件"に彼等が巻き込まれていく。
事件はまず、5年前に起きた「カフェ・ダイヤモンド事件」――。世田谷の洋風創作料理店「カフェ・ダイヤモンド」に5人の猟銃を持った男が、客やスタッフを人質にとって立てこもり、警察が突入。29人が亡くなり、犯人も自爆。テレビの人気のコメンテーター・マイク育馬の軽率な発言が自爆に追い込んだ最後の一押しとなった。被害者たちが秘かにサークルをつくる。庭野、野口勇人、成海彪子らは、警察やマイク育馬などへの復讐を図ろうとするが、その心の奥底には「人生そのものへの絶望」「生きる意味の喪失」「死にたい」「自暴自棄」が共有されていた。そして「やすらぎ胃腸クリニック」「後楽園球場」のテロ事件を起こす。ニーチェの「この世界の嘆きは深い、喜びのほうが、深い悩みよりも深い。嘆きが言う。『消えろ!』と。だがすべての喜びが永遠をほしがっている」との「ツァラトゥストラ」が通底音として全編に響く。
事件に巻き込まれた檀は、不思議な「先行上映」の力で、これらを何とかしのいでいく。そして最後の展開が・・・・・・。