kirawareta.jpg「落合博満は中日をどう変えたのか」が副題。2004年から2011年までの8年間、じつに優勝4回(2004年、2006年、2010年、2011年)。2007年にはクライマックスを勝ち抜いて日本一に輝いた。53年ぶりの制覇、あの完全試合の山井・岩瀬のリレーだ。中日ドラゴンズの黄金期を築き、2011年、優勝にもかかわらず、球団は赤字でファンからも不人気として、「嫌われた監督」落合は追われた。昭和29年、杉下や西沢らで優勝したことを鮮明に覚えている中日ファンの私として、本書は数々の「なぜ」に答える傑作ノンフィクションだ。川崎憲次郎、福留、森野、和田、岩瀬、吉見、荒木ら12人の目を通しての落合像が描かれる。

組織の総合力をいかに引き出すかがリーダーの最要件であることは間違いない。しかし、野球はチーム20人前後の男がプロ中のプロとして死闘を演ずる世界だ。優れた技術を持った男が何人揃うかが大事となる。そこでの総合力だ。だからこそ、落合は妥協せず、信念を持って突き進む。「組織や仲間に迎合せず、『甘え』をそぎ落とし、とことん自分を追い詰め地獄から這い上がったものだけが生き残る」「徹底的に甘えをそぎ落とす」「非情と呼ばれようと、選手を勝つための駒として動かす」「立浪であっても、井端であっても、代えるべきものは代えた」「心は技術で補える。浮き沈みする感情的なプレーや、闘志や気迫といった曖昧なものでもなく、どんな状況でも揺るがない技術を求めた」「勝敗の責任は俺が取る。お前たちは、自分の給料の責任を取るんだ」「勝つことが最大のファンサービスだ。勝てばお客が来る」・・・・・・。非情、冷徹、駒、「建前を嫌い、偽りの笑みを浮かべる位なら孤独を選び、どうせ誤解されるなら無言を貫いた」のだ。序列ではなく、個であること、孤独になること、むしろ徹底して孤独に自己を追い込み、どん底から這い上がる男を求めた。中日はそうした「侍」がレギュラーとして揃ったのだ。

落合には「なぜ」が付きまとった。「なぜ川崎憲次郎を開幕投手としたのか」「なぜ完全試合直前の山井を岩瀬に代えたのか」「なぜ荒木と井端をスイッチしたのか」「なぜ落合は球団を追われたのか」などは、本書に回答がある。監督・落合だけでなく、凄まじい「選手・落合」の人生哲学も語ってもらいたいと思う。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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