saraba.jpg「資本主義の隘路をどう脱出するか」が副題。「グローバリズムの矛盾が露呈し、新型コロナに襲われ、プーチンによる戦争が始まった。一体何が、この悪夢のような世界を見出したのか」「我々が今、生きている世界は、もはやそれほど安閑な場所ではない。超克されることなく妄信されてきた『西欧近代思想』が、なし崩しの禍々しい死を迎えそうな気配さえも漂う。まずは悲観的なビジョンの極限に身をおきたい。現在文明の隘路から脱出する都合の良い正解などない、と覚悟を決めるほかない」といい、直面する課題の根源を剔抉する。2018年の秋から今年3月にかけて連載したコラムや論考を収録している。

「空間、技術、欲望のフロンティアを拡張して成長を生み出してきた資本主義は臨界点に近づいていると言わざるを得ない。無限の拡張、無限の進歩への渇望を適合させた資本主義は限界に突き当たっている。我々に突きつけられた問題は、資本主義の限界というより、富と自由の無限の拡張を求め続けた近代人の果てしない欲望の方にあるのだろう」・・・・・・。

「日本近代、ふたつのディレンマ」――。一つは「近代化の大成功が生んだ列強との対立(西洋文明の急速な導入による近代化を図る以外に、日本は列強の属領化、分割統治を免れることは難しかった。しかし近代化に成功すれば、西洋列強の地位を脅かし、列強との決定的な対立を引き起こす。列強との対立という大いなる危機に陥る)」ことだ。ふたつ目は、「文明化が進むほど失われる独立の精神(外形的な文明化が進展すればするほど、日本人の精神的な空虚感は増幅し、その結果、日本は文明から遠ざかる)」と述べる。今再び、グローバル世界で再演される「日本近代のディレンマ」を指摘する。

また「民意が間違い続けた結果の失われた30年」「『民意』亡国論(民意の便利使いをするメディア、民意にすり寄る政治家)」「主権者を抑制するものがなくなった時、主権者の暴走、民意の暴走が始まる。吉野作造は『民主主義』とは言わずに『民本主義』と言った。彼にとって政治とは『民衆が行うもの』ではなく『民衆のために行うもの』であり、それが『民本主義』であった。民衆の直接的な関与、世論の無条件の反映の危険を彼はよく知っていたのである」・・・・・・。

「ロシア的価値と侵略」「黒か白か、敵か味方か、正義を振りかざし急激に不寛容になった社会」「民主主義こそが独裁者を生み出す」「壮大な『ごっこ』と化した世界。現在の『現実主義』は本当の現実(リアリティ)に直面しているだろうか」「不要不急と必要の間」・・・・・・。一つ一つの論考は極めて根源的、本質的だ。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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