katarin.jpgハンガリーに生まれ、RNA研究を続け、新型コロナ感染症を抑えるワクチンを開発したカタリン・カリコ。ロシアによるウクライナ侵攻という蛮行が続いているだけに、ハンガリー事件で大変苦労したカリコ氏の粘り強い戦いが、より鮮明に浮き彫りにされる。RNA研究を続けるために、30歳の時に娘のテディベアにお金を忍ばせて一家で渡米する。職場で見向きもされなかったり、大学で降格されたり、研究費が出ないなど、とにかく大変な状況が次々と襲ってきた。そのなかでも粘り強く一筋の道を歩み続ける彼女を応援する家族、恩師、同志ともいうべき研究仲間。40年間、あきらめず続けたワクチン開発の裏側にあるカリコ氏の真摯な姿勢を描く。「世紀の.発見は逆境から生まれた」とあるが、本当に感動的だ。

「生涯の師匠となる高校の教師アルベルト・トート博士」「多大な影響与えたハンス・ セリエ博士、ビタミンCを発見しノーベル賞を受賞したセント・ジュルジ・アルベルト博士」「一人娘のスーザン・フランシアさんはアメリカを代表するボートのオリンピック金メダリスト」「mRNAの研究で新しいタンパク質の生成に成功(mRNAに特定のタンパク質を作る指令を出させるという新しい発見)」「mRNAを使えばタンパク質を作らせることができるが、大きな欠点は体内に注入すると激しい炎症反応を引き起こすことだった。これをついにカリコ氏とワイズマン氏の共同研究で克服」・・・・・・。

本書の末尾で山中伸弥教授へのインタビューがあるが、最大の問題は日本でのワクチン開発でも明らかなように、それを薬品として提供できること、「死の谷」の克服だ。カリコ氏は、ドイツの製薬会社「ビオンテック」に2013年に移籍する。そして2020年の世界的な新型コロナウィルスの流行に際し、ファイザー・ビオンテックとモデルナがワクチンの治験・製造を行い、世界各国で使用される。わずか一年足らずという短い期間でワクチンが製造できたのは奇跡的。カリコ氏のような長い年月をかけてmRNAの研究に取り組んできた存在があったからだ。その研究姿勢について、山中伸弥教授は「私自身、人生のモットーを『VW』と言っている。ビジョンとワークハード。自分のぶれない研究テーマを持って、それを達成するために困難にも負けずに打ち勝っていく。まさにお手本です」と言っている。そして研究心を駆り立てるものは「ワクワクドキドキする好奇心です。特に基礎研究者は、朝起きて、今日は何が起こるか分からないという仕事なんですね」と言う。二人とも静かでありながら強い意志を貫く。凄さが伝わってくる。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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