酒屋の自販機と店員を殴りつけた傷害事件で、中年のヘラヘラした男が野方署に連行された。男は、取り調べの最中に「十時ぴったり、秋葉原のほうで、きっと何かありますよ」と予言する。直後、秋葉原の廃ビルが爆発。そして男は、「わたしの霊感じゃあここから三度、次は一時間後に爆発します」と告げる。この男、名前はスズキタゴサクだと、ふざけたことを言う。狭い取調室の中で、爆弾のありかについてクイズのようなやりとりが続く。翻弄される警察――取り調べをする等々力、清宮、類家らは焦るが、その間にも各地で爆発が起こり、死傷者が膨れ上がる。また野方署ではかつて「お恥ずかしい不祥事」があり、事件を起こした伝説の刑事・長谷部有孔が自殺しており、どうもこの事件が関係してるようであった。・・・・・・東京の各地で爆発が起きるという狂気がゲームのように始まり・・・・・・。
恐怖、苛立ち、不気味な不安が東京を覆い、爆発を止められず、追い込まれる取調官や捜査員。復讐や反権力テロの爆弾事件がこれまでの通例だが、今回はどうも違う。「価値のない人生」「無意味な人生」をとことん思い知らされた人物、自暴自棄となり「この街が全部なくなれば良い」「この街に隕石が落ちてしまえばいいのに」という人物を描く。ヘラヘラして饒舌なスズキタゴサクの底なし沼、とらえどころのない不気味さが、更なる恐怖を生み出している。