天皇の権威が低下したと捉えられがちな戦国時代――。後宮女房・皇女達は何をしていたのか、どういう役割を果たしていたのか。戦国時代のみならず、日本の歴史は男性の歴史であったと思われるが、本書は天皇・朝廷を取り巻く、これら女性の実像に学問的に迫っている。すばらしい研究だ。
後宮女房は、天皇の日常生活を支える「侍女」の役割を担うとともに、後宮と外部を結ぶ「伝達者」「使者」の役割も果たしていた。さらに戦国時代は、天皇の正妻(嫡妻)たる皇后や中宮が立てられなかったようで、天皇との間に、世嗣ぎの皇子をはじめ、多くの皇子・皇女をもうけていた。そうなると生母となって重きをなすことになる。
「後宮女房が記した執務日記」「武家政権との間を取り次ぐ女房たち(足利将軍・三好氏、織田信長時代の多彩な活躍、活躍の機会が減った豊臣政権時代)」「朝廷内を揺るがす大スキャンダル事件(猪熊事件など)」「戦国期の後宮女房のはたらきと収入」「将軍側近に勝るとも劣らぬ役割を果たしていた女房たち」「後宮女房の一生と様々な人生」「娘の出仕をはたらきかける実父」「周防の大内義隆に嫁いだ二人の娘、京の文化を取り入れることに熱心であった大内義隆」「その多くが出家した、皇女たちの行方」らが詳述される。大変興味深い著作。