kokumin.jpg「世界は自ら助くる者を助く」が副題。フクシマでもコロナでも、ウクライナ危機を考えても、日本は危機と有事に対する備えがあまりにも乏しいことが明白になっている。気候変動に伴うエネルギー危機もきわどい。安全保障の枠組みが根底から揺さぶられている今、「国の形」と「戦後の形」を検証し、国民が参画する危機管理という観点から新たな国家安全保障、経済安全保障、国民が危機管理に参画する国民安全保障国家を築かねばならない。ウクライナの状況を見ても、「自分の国は自分で守らねばならない」という意思が大事だ。「日本は、平時において、その法制度と規制とインテリジェンスと人的資源、つまりは国家統治を安全保障の観点から見直し、有事の体制を構築するべきである。安全保障とは、国民の生命と財産の安全及び国家としての価値の保全を保障することである」という。

本書は2020年春のコロナ危機から2022年のウクライナ危機までの2年間の論考をまとめている。各誌に発表したものだが、ウクライナ危機後の論考は書き下ろしで新しい。その「国家安全保障、レアルポリティーク時代の幕開け――ウクライナの悲劇、米中新冷戦と日本の選択」「経済安全保障、経済相互依存とネットワークの武器化――グリーン大動乱とエネルギー危機」は、ウクライナ危機以降の論考で、深く広く安全保障 の 重要性をえぐり出している。「ウクライナ 戦争 が 日本 に 問い かけて いる 最大 の 教訓 にして 最大 の クエスチョンは、自らを守ることができる国を世界を助ける、というその点にある」「これからの時代、最も恐ろしい『日米中の罠』は、米中対決の中で日本が選択肢を失う罠である。中国に日本の自国防衛の意思と能力、日米同盟の抑止力の有効性、科学技術力とイノベーションの力を常に理解させるべきである。同時に、日米が中国を全面的な敵性国と決めつけ、それが中国の排他的民族主義を煽り、双方とも後戻りができなくなる状況を避けるべきである。互いに相手の意図を正確に把握、不断の対話をすることが必要である」「そのためには、日本がより自立し、自らの安全保障に責任を持ち、日米同盟を相互依存的な責任共有の体制に進化させるべきであり、有事に国民を保護できる国の体制を作らなければならない。日本の抑止力を高めなければならない・・・・・・」といい、戦略的思考、外交力、統治力を求めている。またウクライナ問題が、エネルギー危機の始まりになることを指摘し、エネルギーの経済安全保障上の脆弱性に論及。かつサイバー攻撃力、監視力、情報統率力、諜報力の全てが脆弱であることを指摘する。さらに「国家的危機には、大きな政府と大きなビジネスが必要だ」という。

コロナでは「デジタル敗戦」「ワクチン暗黒国家」を指摘するが、「不確実性のシナリオの前に、政治家も官僚も『作為のリスク』を恐れ、結果として『不作為のリスク』を生じさせることになった」という。コロナで「泥沼だったが結果オーライ」との言葉を再三にわたって述べている。その場しのぎの"泥縄貧乏"が、構造的に日本を危機に弱い国にしているという指摘を噛み締めなくてはならない。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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