kikaijikake.jpg2020年から始まったウイルスと人類の全面戦争。未知のウイルスと最前線で戦う医療従事者たちがいかに戦ってきたか、精神面も含めた体力ギリギリの「戦場」を描く。「ウイルスは人間の都合なんかに、一切忖度してくれない。あいつらは意思も、そして命すら持たず、ただ増殖するだけの有機機械。少しでも油断すれば、一気に社会を壊滅させるだけの力を持っている。そのことを絶対に忘れちゃいけない」「機械仕掛けの太陽は、これからも人間社会の中で燃え上がり続ける」――。

練馬にある心泉医大付属氷川台病院の勤務医で、シングルマザーの椎名梓、母親の春子と一人息子の一帆の3人暮らし。同じ病院に勤務する20代の女性看護師・硲瑠璃子、結婚寸前の恋人・定岡彰がいる。西東京市で医院を開業している72歳の医師・長峰邦昭。この3人を中心に、それぞれの悪戦苦闘、追い詰められた日々を描く。

まずα株――「そんな室内で、さらに感染対策のためにN95マスク、アイシールド、ガウン、キャップ、防水ズボンなどのP Eを隙間なく着込まなくてはならないのだ。蒸し焼きにされているような心地になる」「今コロナ病棟から逃げ出せば、私は一生父の呪縛から逃れることができない。あそこでの勤務は私の心身を蝕んでいく。助けて、誰か助けてよ・・・・・・」「さっき、一人看取ったんだ。その分、一つだけ空床ができた。そこに患者を入れる。2時間あれば準備できるだろ」「新型コロナウイルスに対するワクチン、90%以上だよ、椎名先生。90%・・・・・・。来月にはアメリカでワクチン接種が始まる」「妊娠中の茶山の妻である礼子が一昨日の夜に発熱した」「普通の病棟業務にも耐えられなくて逃げ出したあなたなんかが、ここでやっていけるわけないでしょ。舐めないでよ。・・・・・・どうしたの、瑠璃子? なんか、・・・・・・別人みたい」・・・・・・。

そして20 21年、デルタ株――。「瑠璃子は父の話にただ耳を傾け続けた。『和郎は言っていたよ。看護師さん達がいたから、希望を失わないで頑張ることができた。あの人たちは、命の恩人だ』ってな」「軽中等症用ベッドより先に重症病床が埋まったっていうのか? そうです。以前の波とは、重症患者の数が桁違いです」「デルタ株の発生源とされているインドでは、全土がその感染爆発に呑み込まれ、酸素が足りなくなった」「都からの要請を受け限界まで病床数を増やす。患者さんが増えて、どんどん人手が必要になってる。入院できない。自宅で酸素が必要に。その酸素がない」「全国でノーマスクでワクチン反対を訴えるデモ。陰謀論の自家中毒によって先鋭化して、カルトと化しています。奴らの妄想の中では、ワクチン接種を推進する関係者は誰もが、大量虐殺者なんですから」・・・・・・。

そして20 2111月、南アフリカに始まるオミクロン株――。「これのどこが弱毒株よ。オミクロン株の最大の特徴である強い免疫逃避。防御壁が崩れ去り、無防備になった人々にオミクロン株は容赦なく襲いかかった」「ICUに入院した6歳の少年の病状は悪化の一途をたどっていた。なぜ日本では小児への新型コロナワクチン接種がこんなに遅れているんだ。このままでは未来ある少年の命が奪われてしまう」「追加接種が遅々として進まないことに焦燥し、行政が動くことをずっと待っていた医療現場は素早く対応した」・・・・・・。

すべての医療従事者、すべての国民が協力し、「力を合わせて有機機械と戦い続けてきたのだ」「この2年間で、C OVIDの致死率を大きく変えることに成功した。効果的なワクチンも治療薬もすでに手に入った。ウイルスとの全面戦争の出口が近づいている」と現在進行形で描いている。この約3年の医療現場を中心にした「戦場」がよくわかる。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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