tuginokantou.jpg「『3·11』からの教訓」が副題。小滝さんは、3·11東日本大震災の時の内閣府(防災担当)総括参事官として、緊急対応に当たった中心者の1人であり、国会答弁も行なった。

まず東日本大震災の初動・応急対応――。津波は想定外の高さ。それまで記録されている津波の高さの最高値は9.3m以上だが、3·11では16.7m(岩手県大船渡市)。また遡上高では40.0mと言われており、沿岸の地盤沈下も大きかった。福島第一原発の1時間後の遡上高は1415m。これによって全交流電源を喪失し、13 号炉がメルトダウンした。初動参集と緊対本部の設置(1514)1537分に第一回緊対本部会議、1542分に電源喪失。まさに「想定外」。それに対応するには「最大級の巨大災害を想定しての備え」「そのための減災の積み重ね」「臨機の対応力」を拡充する「巨大災害対策の設計思想」を述べている。

加えて特に本書では、「憲法の災害緊急事態条項のあり方」に触れ、緊急財政支出制度や巨大災害時における国・地方関係など、法律に基づく緊急政令制度よりも包括性や弾力性を有する仕組みができないかと問題提起をしている。

日本の防災行政体制のあり方は、重要なテーマ。防災省()や日本版FEMAをつくれという提案がいつも出てくるが、「巨大災害には内閣を挙げて取り組むもの」として、議論されるべきは「内閣機能としての中核機能(総合調整機能)」のあり方であり、内閣府防災が担っている防災行政体制を拡充・強化すること。具体的には.巨大災害対応のための能動的・積極的な政策機能(シンクタンク機能・政策司令塔機能)を有する組織に進化させること、現行の地方自治体の防災行政事務(自治事務)を国の役割を強化(法定受託事務に移行)することが急務だと言う。内閣補助事務を担う内閣直属の機関である「内閣防災府」への格上げを提唱する。

首都直下地震については、何といっても火災対策。東京の木密地域対策は、「木密地域不燃化10年プロジェクト」、その面整備としての「防災街区整備事業」が着実に推進できていると指摘した上で、「延焼ネットワークのハブの共同建て替え」を自ら進めていることを紹介している。納得する。

関東大震災後に、寺田寅彦は「20世紀の文明をたのんで、安政地震の経験を馬鹿にした東京は関東大震災で焼き払われた」と言い、後藤新平は「国難を国難として気づかず、漫然と太平楽を歌っている国民的神経衰弱こそ、最も恐るべき国難である」と言っていることが紹介される。本当に噛みしめたい。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

太田あきひろホームページへ

カテゴリ一覧

最新記事一覧

月別アーカイブ

上へ