うらない処.png

場所は東京北区の王子。その王子稲荷のふもとの商店街に、ホストあがりのイケメン毒舌陰陽師・安倍祥明がよろず相談ごとを受ける占いの店「陰陽屋」を開く。そこに、ひょんなことから妖狐(化けキツネ)で飛鳥高校に通う沢崎瞬太がアルバイトで入ることになる。この妙なとりあわせのコンビが、「いいかげん」というか「おせっかい」というか、「絶妙な人心掌握」というか、結果として悩みを次々と解決に導いていく。ほのぼの感が残るこの人気シリーズは、「陰陽屋へようこそ」で始まり、本書で第5巻目。主人公の沢崎瞬太も中学生から高校生。やっと2年生になる。

私の地元・王子が舞台、しかも10月からは連続ドラマ(錦戸亮主演)が決まっている。不思議なこの物語が、どういう映像になるのか、それも興味深い。


新幹線とナショナリズム.png

あの昭和の戦争が終わって10年余――。昭和34年に着工した新幹線は、わずか6年で完成、39年の東京オリンピック直前の10月1日に開通した。きわめて鮮明に、高揚感があったことを覚えている。しかもそれが企画された時は"鉄道斜陽化論"の真只中にあった。

「ナショナル・シンボルとしての新幹線」「ナショナリズムがつくりあげた新幹線」だと藤井さんはいう。そこでいうナショナリズムとは、「歴史と伝統、文化を中心とする民族主義(エスニシズム)」と「近代化の過程で生ずる政治的、経済的意志に基づく政府主義(ステイティズム)」の二つを焦点とする楕円的なる性質を帯びたものであり、両者の化学反応で生ずるものと指摘する。つまり新幹線は「敗戦で傷ついたナショナル・プライドを取り戻し、日本国民が一致団結して立ち上がる、そして文字どおり"世界一"の技術でつくり上げた新幹線を、オリンピックという全世界が注目する舞台で世界に見せつける、という"大きな物語"のうねりのなかでつくり上げられた」というわけだ。

新幹線、高速道路、リニア、東北の復興――「つなげよう、ニッポン」を成功させるためには、精神的結びつきが不可欠だとする。


新時代の企業防災.JPG「3・11の教訓に学ぶ地震対策」と副題がついている。首都直下地震と南海トラフ巨大地震が起これば、人的および社会経済被害は計り知れない。被害の最小化、迅速な回復を図る「減災」と「レジリエント(強靭化)」を早くから訴え続けた河田さんが、災害多発・激化時代に対して国・自治体、企業、個人・家族がどう迎え撃つかを示した著作だ。

東日本大震災やタイ・チャオプラヤ川氾濫被害、米のハリケーン災害などで何がおきたのか。そこから導き出される教訓は、災害は各般、広域、時間的変化と多岐にわたる甚大な影響をしっかり想定した対応の必要性だ。さらに地震と水害などが重なってくる複合災害となることを想定した体制、組織、対策をつくることの緊要性だ。企業におけるBCPは、そうした大災害に対応するものでなくてはならないし、道路や通信などのネットワーク(網)というものにとくに配慮したものでなければならない。

脆弱国土・日本。それが高度に発達し脆弱性をより内包した社会となっていることを直視し、国土と社会の安全保障に踏み出さなければならないことを痛感させる。具体的、包括的、実践的な防災・減災の必読書だ。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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