まるまるの毬.jpg

麹町6丁目の裏通りにある小さな菓子店・南星屋――。その看板娘・お君、その母親・お永、お永の父親・治兵衛、その弟・石海(五郎)。治兵衛は、諸国の名物菓子を拵え、毎日、店の前には行列ができ、すぐ売り切れる。評判の店だ。


そうした日常のなかに、事件・難題が持ち込まれる。一人一人が相手のことを思う、その心情がじわっと伝わってくる。江戸の町の人情は心持良い。


風の如く久坂玄瑞篇.jpg

NHK大河ドラマ「花燃ゆ」において「蛤御門の変」で久坂玄瑞が死亡した(7月5日放映)。本書は久坂玄瑞を中心として、風倉平九郎、高杉晋作、そして桂小五郎、吉田栄太郎、伊藤俊輔らを「桜田門外の変」「航海遠略策(長井雅楽起草)」「寺田屋事件」「奇兵隊」「蛤御門の変」の5部で描く。


幕末を吉田松陰門下の若者がいかに、師の魂を抱きしめ、尊王攘夷を掲げて走ったか。幕府、朝廷、各藩がいかなる思惑で動いたか。頭に血がのぼったかのような激情と思想。そのなかで久坂玄瑞は確かに「風の如く」去り、「激情のなかにも風の如く冷静に」「風の如くもの悲しく」「風の如く同志にやさしく、さわやかに」散った若者だったのだろう。英傑とは対極にある俊英・久坂玄瑞を感じた。


国土が日本人の謎を解く  大石久和著.jpg

「国土学」の第一人者の大石さんが、国家論を論述している。日本国家を考えれば日本人論、その日本人論は当然、国土に人間が働きかける「国土学」という広大な背景から把えなければならない。そうした国土学から日本人論、国家論へと迫っている。


その射程は日本の今と未来にある。「戦後は戦前の否定では終わらなかった。日本そのもの、歴史も精神を含むすべてのものを否定された。これを放置したままでは、われわれ日本人は根無し草として世界に漂う存在であり続けるしかない」「わが国土の自然条件、位置条件によって世界中の他の国民や民族と相当に異なる経験をし、考え方・感じ方を育んできたのが日本人」であり、「"仲間と共同して働く""集団力の発揮"を取り戻そう」と指摘する。たとえば新自由主義経済の「小さな政府」「緊縮財政」「規制緩和」「自由化」「民営化」などの主流化は、この日本人の強みである特性を破壊してきた。日本人が厳しい自然に翻弄されながら培ってきた互いに助け合う「共」の原理と、欧米人が築いてきた「公」の原理とは根本的に違う。思考停止を戒め、日本人の強みを生かして未来に挑め。智慧は蓄積されているではないか――そんな声が聞こえる。


永い言い訳西川美和.jpg

衣笠幸夫(人気作家の津村啓)は、冷めた関係になっていた妻・夏子を突然のバス事故で失う。同じ事故で亡くなった友人には、夫(大宮陽一)と真平、灯の3人の家族がいる。悲しみを露わにする陽一家族と、涙を流すことができなかった幸夫の交流が始まる。悲しみ、喪失、狼狽、悔恨、自責、葛藤、愛別離苦、憎愛、屈折、孤独・・・・・・。


「人は後悔する生き物だということを、頭の芯から理解しているはずなのに、最も身近な人間に誠意を欠いてしまうのは、どういうわけなのだろう」「愛するべき日々に愛することを怠ったことの、代償は小さくはない。・・・・・・喪失の克服はしかし、多忙さや、笑いのうちには決して完遂されない。これからも俺の人生は、ずっと君への悔恨と背徳の念に支配され続けるだろう」「あのひとが居るから、くじけるわけにはいかんのだ、と思える"あの人"が誰にとっても必要だ。想うことの出来る存在が。・・・・・・人生は、他者だ。・・・・・・遅いか、あー」


本文の「長い言い訳」が、「永い言い訳」の題に変わっているがゆえに、永遠の人生的、哲学的な問いになっている。"言い訳"というより"問いかけ"、どこまでも続く「永い問いかけ」となって深みを増している。それが息の長い、丁寧な文章で書かれて、心に浸み込んでくる。


佐治敬三と開高健.jpg

佐治敬三(1919~1999)――稀代の経営者であるサントリー二代目社長、生産量世界一のウイスキーをつくり、"大阪最後の大旦那"といわれた存在感と人間味あふれる経営者。一方の開高健(1930~1989)――貧困のどん底から佐治敬三に活躍の場を与えられ、コピーライターとして才能を開花、芥川賞受賞、破天荒の世界基準の無類派作家。


戦後の荒廃から高度成長期の日本。その先頭をかきわけ、ぶつかりながら走った佐治敬三と開高健、そしてその仲間たちのエネルギーはすごい。「身体が大きくて声がでかい。底抜けに明るく豪快で無神経な言動も多いが、実はシャイで傷つきやすく繊細な神経の持ち主。そして心の奥に、触れたくない心の傷を抱えている。それが二人の共通点だった」「彼らは互いの中に似たものを感じ、惹かれあい、刺激しあって人生をより豊饒なものとしていった」と北さんはいう。佐治の父親・鳥井信治郎、そして「マッサン」の竹鶴政孝・・・・・・谷沢永一など。その友情と絆は、不運と幸運を超えた激情、豪流の人生を形づくる。北さんが時折りはさむ珠玉の言葉がとてもいい。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任、公明党前代表。元国土交通大臣、元水循環担当大臣。

現在、衆議院議員、党全国議員団会議議長、東京第12総支部長、首都直下地震対策本部総合本部長、現代中国研究会顧問など。

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