本当に住んで.jpg副題は「全国『官能都市』ランキング」だ。「住みたい街」とか「住みやすい街」というランキングはあるが、本当に豊かに楽しく生きられる魅力的な街というのには新しい物差しがいるのではないか。それは「感覚を楽しませる」「五感に訴えかける」という官能都市(センシュアス・シティ)だという。

広い真っすぐな道路に沿って公園や超高層ビルを建てる「輝く未来都市」は、ル・コルビュジエの発想だが、アメリカの女性ノンフィクション作家、ジェイン・ジェイコブスは「アメリカ大都市の死と生」(1961)で、コルビュジエにルーツをもつ自動車中心の近代都市計画を痛烈に批判した。センシュアス・シティは「ジェイコブスの4原則」と共通項をもつ。即ち「住宅、オフィス、商店、飲食店が狭いエリアに混在している」「入り組んだ小さな路地が多い」「古い建物と新しい建物が混在している」「いつも人通りが絶えることがない」の4原則だ。そして、「共同体がありつつ、匿名性もあり、ロマンチックで、刺激的な出来事に出会うチャンスもある。食文化が豊かで、歩いて楽しくまちも自然も身近に感じられる。その都市に住めばなんだか毎日が楽しそうだ。私たちは、そんな人間らしい動機をまず構想すべきではないでしょうか」といい、日本の各都市・区のセンシュアス・シティ・レーダーチャートを示す。


桜.jpg「戦争ほど、残酷なものはない。戦争ほど、悲惨なものはない」――。歴史上、何度も国を奪われ、そのつどさらに深い絶望に叩き落されてきたポーランド。1939年秋以来、激しい爆撃に見舞われ、ワルシャワはナチス・ドイツに蹂躙され、悲惨と残酷と悲劇の都市となった。そして43年のスターリングラードのドイツの大敗、猛反撃するソ連軍、敗走するドイツ軍。徹底したワルシャワの破壊、ユダヤ人の収容所送り、死の街と化していたワルシャワを自らの手で取り戻そうとした44年8月のワルシャワ蜂起。絶望のなか死によっても最後の誇りをかけた戦いに、命をかけて行動を共にした一人の日本人外交官・棚倉慎がいた。慎、レイ、ヤンの三人は最後の最後、「いつか必ず、三人で日本の桜を見よう」と約束する。

ショパンの叩きつけるような激しい旋律「革命のエチュード」が心に響く。戦争の悲惨、残酷さに言葉を失う。周囲の強国に食い荒らされ、地図から何度も消えた国の悲劇とは。祖国を失う、自分の居場所を失うとは。「死」しか選択のないなかで人間は何をもって戦おうとするのか。他国や他の民族への憎悪からではなく立ち上がる愛国心とは。戦争の狂気、この世の地獄の惨状とは。ゲットー、トレブリンカ、アウシュヴィッツとは。陸続きの国の戦争実態とは・・・・・・。

よくぞ書き上げたすさまじい力作。


イギリス.jpg世界に衝撃を与えた「英国のEU離脱」「米国のトランプ大統領誕生」――。背景には「難民・移民」と「格差拡大」がある。何が起きているのか、今後の世界はどうすればいいのか。日本は、英国は、米国は。前駐英大使の林景一氏が、生々しい欧州、英国の実情を報告、多くの示唆を与えてくれる。

「英国のEU離脱は、トランプ当選と同じようにグローバリゼーションに対する抵抗感が背景にあるし、社会格差が放置されていることに関して、支配層・エリートに対する反感・不満の表明という側面も共通している」「しかし、米国の孤立主義・保護主義にベクトルがあるのに対し、英国のEU離脱は、基本的にEUという国際組織の束縛から逃れることを主眼としており、英国の伝統と、大陸に隣接する島国であり、貿易立国であるという要因を受けて、孤立主義、保護主義という考えは持っていない」「EU統合の持つ本質、つまり異なった国家を結びつけるために、EUという外部権力が共通ルールを作って標準化するという規制体質への英国的保守主義からの抵抗というものが、大きな要素だ」「もし米国が今後内向きになり、孤立主義に向かうとすれば、日英は米国の利益が対外関与にあることに目を向けさせ、国際社会に引き戻すべく、日英協調でいくべきだ」「英国のしたたかさに学びつつ英国との連携が日本の国益だ」という。

「英国EU離脱の衝撃――でも英国は終わらない」「EU離脱の真実――優遇でも国民は不満」「EU離脱交渉の今後」「英国はEU離脱を恐れていない」「戦争をしないための世界秩序構築」「世界秩序激変で"日英同盟"のすすめ」――。「英国と欧州」を歴史的にも実態的にも掘り起こし、現今の世界情勢を俯瞰し、構造的に解き明かす。


61mhDSXQhbL._SX230_.jpg天正10年6月2日(1582年6月21日)、本能寺の変。その時、各武将は何を思い、どう動いたか。「決戦!関ヶ原」「決戦!大阪城」に続く、7人の作家による決戦シリーズ第3弾――。武将たちの野心、怨念、死生を立体的に描く。面白い。

「覇王の血 織田信房 伊藤潤」「焔の首級 森蘭丸 矢野隆」「宗室の器 島井宗室 天野純希」「水魚の心 徳川家康 宮本昌孝」「幽斎の悪采 細川幽斎 木下昌輝」「鷹、翔ける 斎藤利三 葉室麟」「純白き鬼札 明智光秀 冲方丁」――。

「我に叛意あり」・・・・・・。なぜ明智光秀は、天下人目前の織田信長を討ったのか。それぞれの業が描かれる。


新・所得倍増論.jpg「潜在能力を活かせない"日本病"の正体と処方箋」が副題。「所得倍増」といっているのは、「日本のGDPは世界で3位」「日本の輸出額ランキングは世界で4位」などといっていないで、「1人当たり」で見よ。「日本の生産性は先進国の中で最も低く(27位)、それに比例して所得も最下位」という現実を見よ。潜在能力はある。やるべきことをやり、それを発揮すれば、貧困、国の借金、社会保障問題も解決する。"人口ボーナス"のあった時代の意識を変え、「生産性」を高めよ。人口減少の時代でも経営者が意識を変え、意欲をもって進めば、「生産性」は格段に高まる――そういう。

「農業の1人当たり総生産が異常に低い」「最大の問題点はサービス業の生産性の低さ。IT活用による生産性改善が失敗している。そこで多く働いている女性は、もっと"同一労働"をすべき」「女性の非正規がふえており、同一労働をさせない経営者が問題で、女性の生産性向上は不可欠」「低学歴で安い労働者を中心に移民を迎えると失敗する」「1億人の人口維持のためには"生産性向上社会"しかない」「失われた20年は、人口減社会のなかで、国をあげて生産性改善に踏み切るのだという気概を失っていた」「"流れ"に任せる。マニュアル化。ルールが好きで融通がきかない、縦割り行政は、人口増社会の副産物」「"中小企業かわいそう"現象。企業が多いとオーバーヘッドという固定費が増え、社員という労働者にしわ寄せが向かう」「生産性を上げることは、賃金を上げる経済をめざすこと。それは期待できる追加需要が発生し、国も公共投資ができることになる」――。そして「日本の潜在能力にふさわしい1人当たり目標を計算する」「輸出は3倍に増やせる」「農産物は8倍に増やせる」「GDPは770兆円まで増やせる」「生産性を上げるカギは首都・東京だ」という。生産性や経営者の意識改革を訴える。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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