望郷.jpg瀬戸内海の白綱島が舞台。閉ざされがちな島の社会。一見、平穏な生活と思われるなかに、宿命との対峙、窒息しがちな生活が描かれる。最後は息づまる暗闇をパッと抜け、三変土田。光の世界が広がる。

「みかんの花」「海の星」「雲の糸」は先日、テレビドラマとしても観たが、「夢の国」「石の十字架」「光の航路」も加わっての6作品は、いずれも素晴らしい。「望郷、海の星」は2012年の第65回日本推理作家協会賞(短編部門)だが、「これがミステリー?」と思った。光が心に迫り、広がる。


父親ができる最高の子育て.jpgテレビで講演を聞いたこと、さらに「読解力」「意味を考える力」をどう獲得するかを考えていたこともあって、高濱さんの本を読んだ。2050年以降も「生きる」今の子どもが「生き抜く力」を身につけるにはどうしたらよいか。父親の役割は大きいようだ。

まずは、「家庭での父親の第一義的仕事はあくまで『妻を笑顔にすること』、そして『母親が安心して育児に取り組めるように支えてあげること』」という。子どもの心身の成長、学力の伸びは、妻の笑顔からということだ。とくに父親は「正しい会話、意味のある会話を日常的に心がけること、論理的思考を伸ばすこと」に努めることだ。言葉の厳密さは学力に比例し、言語感覚は日常会話でしか培われない、という。

妻からの相談ごと、会話には、「解決してあげる」と思わないで「寄り添う」「共感」「聞くこと」にこそ価値がある。そして、「子どもに何かひとつ自信をもたせること」を養うことが大切であり、「子どもの自信、生き抜く力は、親が養ってあげるもの。照れずに本音でぶつかること、取り組むこと」を示す。


秘録 公安調査庁 アンダーカバー.jpg「膨大な数の海上民兵を乗船させた約90隻の漁船が、魚釣島への一斉上陸を行うために、4日後に出航予定」――。公安調査庁の分析官・芳野綾は重大な情報を入手する。時間がない。寒気を覚えるほどの桁外れのレベルの情報に、綾は走り突っ込む。情報の真偽、背景にある権力闘争、協力者への二重スパイ疑惑、激震の官邸・各省庁の動き・・・・・・。国家的危機のなかでのインテリジェンス、揺らぎなき使命感、培われた信頼の人間関係などの重要性が緊迫感のなかで迫る。戦争回避への息詰まる深層の攻防。


裏切りのホワイトカード.jpg池袋ウエストゲートパークⅧ。池袋Gボーイズのタカシとマコトが、闇にうごめく悪から純朴な庶民、親子を救い出す。池袋も西口公園も滝野川、上池袋、大塚、板橋もなじみだけに、これまでの作品以上に臨場感をもつ。

ネット社会での残酷な攻撃。真面目な宅配ドライバーの別れた息子が虐待されていた事件(「滝野川炎上ドライバー」)。母親が覚醒剤を扱う悪い男にハマって娘の中学生にまで魔手が及ぼうとした事件(「上池袋ドラッグマザー」)。ITと心理詐欺の話(「東池袋スピリチュアル」)。スペインの銀行にまでつながる偽造カード事件(「裏切りのホワイトカード」)。

IT社会の光と陰と闇のなか、池袋の"トラブルシュータ―"マコトとタカシの面目躍如。痛快。


人口減少時代の土地問題  吉原祥子著  中公新書.jpg「『所有者不明化』と相続、空き家、制度のゆくえ」が副題。所有者不明の土地が全国で増加している。なんと日本の私有地の約20%、九州を上回る規模になっている。これまでは地方、農林業関係者の間で、過疎化・相続増加にともなって相続人把握の難しさが指摘されてきたが、今は震災復興や耕作放棄地、空き家対策で都市部も含めて顕著となっている。国として対策に乗り出し始めた段階だが、ことは人口減少・高齢社会と経済成長を前提とした土地制度との乖離という構造的問題だけに、政府あげての総合的取り組みが不可欠だ。いらない土地がふえている、ということだ。

「問題の根源――相続未登記の広がり(相続登記は義務でなく任意である)」「登記が行われた年が50年以上も前が19.8%も」「わずか192㎡の土地の相続人が150名にも」「全農地面積の約20%が相続未登記」「土地情報基盤の未整備(不動産登記簿、固定資産税台帳、農地台帳、国土利用計画法に基づく売買届出)」「地元を離れる不在地主の増加」「死亡者課税が200万人以上にも」「増える相続放棄の申し立て」・・・・・・。こうした現状には「地籍調査(現在52%)の遅れと原因」「不動産登記制度の限界」「強い所有権と"土地神話"の問題」「権利関係の調整難航」「費用や時間のかかり増し」があることが指摘される。

そして、解決の糸口として①相続登記のあり方②「受け皿」づくり③土地情報基盤のあり方――の3つの論点とその改善策が示される。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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