現在、日本のガン患者は300万人、年間ガンで死亡する人が30万人を超え、10年後には、2人に1人がガンで死ぬという、もはや、ガンは特殊な病気ではなく普通の病気、身近な病気である。
ガン治療は進歩して、半数以上が治療できているらしいが、残り半数は数年の内に死に至る。
著者がいうには、日本の医療は、この非治癒患者のケアにもっと力を入れるべきという。
体の痛み、心の痛み、社会的な仕事がなくなる、経済的につらい、家族との別れなど、厳しい痛みを和らげる緩和ケアが大切となる。
もう普通の病気なのであるから、治ったら勝ち、治らなかったら負けのような考えでなく、ガンと共存しつついかに人間的に生きるか。まさにガンに立ち向かうことは、「自分を生ききる」ことであり、死に立ち向かう人の生きざまの凝縮だという。
病気を治すことが医療の役割りではあるが、人間は必ず死ぬものである、この認識に立ち、死にゆく者のために何ができるか――緩和ケアは立派な医療の使命である。
告知の是非も含め、人間がどう生きるか、どう死ぬか、こういったことが、根底に問われる。