しっかりした本である。まさに、歴史・現状・論点を整理して、主義やレッテル張りを排除して、徹底的に冷静に分析してくれる。アメリカ標準を安易に前提とする議論にも、日本異質論にも(日本だけでなく他国にもある)、また1940年体制についても、システムが固定化したというより、特有の仕組みが「選択されつづけ」たといい、警鐘を鳴らす。大蔵省の均衡財政主義は職業的使命感として是認したうえで、"角を矯めて牛を殺す"という経済の萎縮をもたらさないようにと懸念も示す。
実需ではなく、投機需要が経済を撹乱し、時に破壊することも、これまでの歴史のなかに学んできたとある。
さあ、日本の今と今後、市場主義、小さな政府、アメリカ・モデルでなく「合理的な助け合いのネットワーク」「能力に応じた負担、必要に応じた受益」「権限と責任の明確化」など、社会を組み換える原則をしっかりと提起する。