すさまじい本だ。いや戦争の現実がすさまじい。悲惨、残酷、地獄ということだ。若き通信兵だった合津さんが、ソ連軍侵攻による敗戦と、それに続くシベリア抑留体験を綴った迫真のドキュメント。60年たってこれだけ生々しく語れるのは一体どういうことなのか。細胞にまで刻まれてしまったということではないのか。コッポラの「地獄の黙示録」だ。武田泰淳「ひかりごけ」だ。
若き兵士が8月15日をどう迎えたか。生きたか。生と死の記録というにはあまりに言葉及ばぬ悲惨、残酷な現実。凍土のシベリアの夜中、死んだ友を離れてシラミが暖かい合津さんに移動する。希望のないという日々がどれだけ想像を絶する絶望に人をたたき落とすか。
読み終わって、表紙の白樺の絵を5分間ほど、ながめていた。