不逞老人.JPG自分で立って、自分で考えて、既成・既存・お仕着せの体制・仕組みに距離をおいて行動する――鶴見さんの思想と哲学がこんなことまで語るのかと思うほど率直に語られる。

40年以上共に歩んだ黒川さんが聞いているからこそ、語られている。鶴見さんの歩んだ一本の道に、多くの思想家・哲学者・詩人・学者たちが縁し、人生をぶつけ合う。深い。これ自体が日本の思想史だと思った。


ぼくはこう生きている君はどうか.jpg対話。しかし重松さんは鶴見さんの「講義」を生徒として聞いて、生徒冥利に尽きるという。決して高みに立つことのない、フェアで新鮮な好奇心――鍛え抜かれた思想・鶴見さんの姿にふれて対話が進行する。難解な思想・哲学とは違って淡々とした対話だ。

「自分はこういうふうに生きている」「きみはどうか」――それが私にとっての哲学だと鶴見さんはいう。

「普通の家庭だと子供を一人ぼっちにしない、子供に失敗の悲しみを味わせないことが親の愛だと思う(思いがちだ)が、一人で生きられる力をつけさせることが子供を育てるということだ」

「友達万能時代(友達100人できるかな・・・)。一人になるということに対する耐性・免疫がない。つながりたいといつもケータイ、メール」

「成績がいいということと、頼りになる人間とは違う」「ひらめきがあって持久力もある人はいま少ない」「現役ということ」

「理屈や言葉だけでなく、実行する人を評価する、生活に密着した行動する人を」

対話とは、こういう人生の生の重い言葉にふれられる喜びだ。



知の編集工学.JPG2001年に発行された本だからもう10年になる。

経済や社会の諸現象を理論やイデオロギーで切り取って解釈してくれても、確かにワクワクはしない。逆に「それはユダヤ人による」などという切り口に飛びつく時の方がワクワクしたりするが、それば物語性があるからであろう。

しかし、そこにも違和感があるのは最初からマユにツバをつけているからかもしれない。また論者の独りよがりの思考が読者を呪縛し切れないのは、私たちが葛藤や矛盾をあふれんばかりに抱え込んでいる存在であるとともに、人間が主体性とともに人と人との間という関係性のなかに生きる存在であるという「間」への認識が欠けがちだということにもある。世界、広がりと奥行きへの認識だ。


CO2削減はどこまで可能か.jpg温暖化ガス-25%の検証がされている。麻生政権で出した2005年比15%減(90年比-8%)、鳩山政権の90年比-25%を中心として、昨年来の中期目標の6つの選択肢(P35)を検証している。2050年、先進国80%減についても茅さんは「先進国半減、途上国ほぼ倍増が現実の限界か」ともいう。

中期目標も
(1)京都議定書目標との整合性
(2)長期目標との整合性
(3)他国、特に先進国との衡平性
(4)実行可能性
――などについて分析する。

国際的な公平性指標の考え方も種々ある。2050年には、電力に頼ることになるが、その時に原発は80%近くを担うことになる。

GDPへの負担、家計への負担・・・・・・。種々検討しているが、25%減はヒマラヤ登山、麻生目標でも国内の相当の山登りにも似たものだ。排出権取引も含めて、本書は判断の仕方を示してくれている。


教室の亡霊.jpgいじめなどの教育現場の深刻さ、教員採用をめぐる大分県の賄賂事件などを背景にした殺人事件を浅見光彦があばくミステリー。

わが東京・北区を1つの拠点として活躍される内田康夫さんのデビュー30周年記念の3か月連続刊行の第1弾、それがこの「教室の亡霊」だ。

社会問題を常に背景として、こうしたミステリーがよく描かれるものだと感嘆する。面白い。


プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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