2001年に発行された本だからもう10年になる。
経済や社会の諸現象を理論やイデオロギーで切り取って解釈してくれても、確かにワクワクはしない。逆に「それはユダヤ人による」などという切り口に飛びつく時の方がワクワクしたりするが、それば物語性があるからであろう。
しかし、そこにも違和感があるのは最初からマユにツバをつけているからかもしれない。また論者の独りよがりの思考が読者を呪縛し切れないのは、私たちが葛藤や矛盾をあふれんばかりに抱え込んでいる存在であるとともに、人間が主体性とともに人と人との間という関係性のなかに生きる存在であるという「間」への認識が欠けがちだということにもある。世界、広がりと奥行きへの認識だ。