
本書が書かれた当時の定額給付金については、「定率減税より定額減税が低所得者にはいい」とし、給付付き税額控除の意味をもつと私は言った。
本書は、じつに200年以上も前から、著名な経済学者・哲学者がベーシック・インカムを主張し、今でもガルブレイスやフリードマンをはじめとして、常に議論されてきたことを示している。エーリッヒ・フロムもだ。
つまり、福祉国家の理念は、
(1)完全雇用
(2)社会保障
(3)公的扶助(生活保護など審査が必要)
――の3つで構成されている(保険・保護モデル)が、ベーシック・インカムはそれを越えるだけでなく、労働(働かざる者、食うべからずの思考)や、ジェンダー、グローバリゼーション、所有(何が自分の持ち分か)など、根源的問題を考えて提起されてきたものであることが分かる。
「労働価値(家事は労働か)」「市民権(生きる価値、権利、生存)」という根源的問題から提起されてきているわけだ。本書はその長い論争をたどってくれている。