「子は怪力・乱神を語らず」(述而篇7-20)――。この難しい社会にどう生き抜くか。君子(教養人)をめざせ。小人(知識人)になるな。知識のみを追 い求める人間ではなく、知性と徳性を併せ持つ人間・君子たれ。加地先生の境地から、生き生きとした生々しい孔子の言葉がよみがえる。
「温故知
新」――まさに時空を超えて人間や社会の難問にどう立ち向かうか、生き抜くか。「論語」が今の浅薄・喧騒の社会であればこそ普遍性をもって目の前に現われ
る。孔子が不条理とも思える社会のなかでもがき、それが例えば冒頭の「学びて時に之を習う。......朋遠方自り来たる有り。亦楽しからず
や。......」となる。「伯牛疾有り。......」――窓から手を執って「命なるかな。斯の人にして、斯の疾有り」と二度言って嘆息する。まさに息
づかいまで聞こえてくるようだ。