当然、北方領土、尖閣諸島、竹島。これらは長き歴史とともに、あの戦争、ポツダム宣言が出発点にある。そして51年のサンフランシスコ平和条約、56年の日ソ共同宣言、65年日韓基本条約、72年の日中共同声明。孫崎さんはその交渉の背景にあったもの、両国の思惑、そして米国の戦略などを、端的に、具体的文書や当事者の発言録などで浮き彫りにしている。北方領土・日ソ共同宣言の背景をみても、孫崎さん自ら踏み込んで言うように新鮮だ。
ドイツと日本は同じ敗戦国といっても違う。今日からみても欧州と北東アジアは地勢、国勢からも違う。しかしそのうえで、アデナウアーが「私が取り組んだのはドイツをも加えた欧州合衆国という問題であった」とし、独仏協力やがてはEU構想へと発展する思考のパースペクティブ、それを具体化しようとした勇気がある。苦難の蓄積とそれをためこみ放つ哲学を感ずる。変化する時代をリアルに凝視した構想力をもつこと、自らの思考のバリアを越えること、戦争を回避する智慧(本書では平和への9つの方策が提示される)――それが大事であることを示唆してい